東日本大震災から7年たって、被災地では復旧から復興、原発事故処理も除染・廃炉へと重心が移り変わってきており、震災後に誘致された工場のライン、コールセンター等で働こうとして、仙台に人々が集まってきています。仙台夜まわりグループが年中無休で開設している生活困窮者相談窓口「ヘルプ!みやぎ」では、派遣業者が借り上げている宿舎やネット喫茶、車上、大型銭湯等で過ごす人たちが、理不尽にクビを切られたり、約束していた仕事が始まらなかったりして、助けを求めて相談に来る割合が高くなってきました。ホームを失った不安定居住下にいる20-30代の若者たちが、仙台でも急増しているのです。彼ら彼女らは、宿代と飯代、足代を確保することだけで消耗してしまい、蓄えもキャリアアップもできないまま歳を重ね、病気や事故で休んでしまったらクビになってしまうことをおそれながら、次の仕事を告げる携帯への連絡を待ち続け、不安な毎日を過ごしています。

SNSで情報交換できる人たちが、様々な困窮者支援の機会を渡り歩いてその場を凌ごうとするケースも多くなりました。最悪の事態に陥るのを予防するという点では良いのですが、他方、あちらこちらと器用に渡り歩くことができている間は、いわゆる「底つき」になりません。職種転換や債務整理、ギャンブル依存や心身症の治療、生活訓練・金銭管理、健康な趣味の開拓等々、自分が抱えている様々な問題に気づかされ、解決すべき課題に立ち向かわざる得ないところにまで、いつまで経っても行き着かないでいるのです。

心身を落ち着かせ、なぜホームを失ってしまったかに自ら気づいていくことができるような時間と空間、将来のことに思いを巡らす機会、そのための専門の知識を持った人たちによる手助けが、現場では求められています。就労支援の仕事を委託されている様々な団体がありますが、離職票だったり、手帳だったり、診断書だったり、支援を受けるために必要とされる書類や様々なハードルがあるために、やっと底付きになって、どうしようもなくなって相談しに行っても、窓口をたらい回しにされ、最終的に路上に出てしまうのがオチです。幸いにして受け入れられても「仕事も住居も見つかったので、はい、これで問題解決」とされてしまうことがほとんどです。

女性たちからの相談の割合も高くなってきました。とりわけ、DV被害・性的搾取の被害者たちが人生のやり直しをする場合には、外部から守られた静謐を保つことが出来る女性専用の施設が必要です。行政に対しては、路上や車上、ネット喫茶などからも直接助けを求めることができる、スタッフや設備の整った施設を常設するように要望していますが、路上生活者概数調査でも一割に満ちない少数者である女性のホームレスに対する行政の手当ては薄く、残念ながら後手に回っています。

宮城県仙台市では、こうした問題を可視化させる試みの一つとして、ネットカフェ居住者や車上生活者の実態調査のために官民での協働作業ができないかを模索しています。そのためには、縦割りではない、複合カフェや大型銭湯、簡易宿泊所や労働者の職員宿舎等を監督・管轄している各省庁の横断的協力と理解が必要です。定点から見た路上に寝ている人たちの全体数の移行を記録・分析しようとする従来型の全国ホームレス概数調査では全く見えてこない人たちが、年々増えて来ているためです。彼ら彼女らの実態が可視化されてこない限り、これからなすべき、生活困窮者やホームレスを支援するための実効性を持った新しい施策も見えてこないでしょう。(2018.8.1発行予定「夜まわり通信31号」序文より翻案)