私たち、さいたまNPOセンターが、「さいたま市市民活動サポートセンター」(以降、「サポセン」と表記)から2016年3月に撤退して、2年が過ぎた。

次期、指定管理者候補に選ばれながらさいたま市議会による「サポセン条例の改正」、つまり「指定管理者制度を停止する」という決議によって、「さいたま市型協働管理運営」が唐突に、強制的に終わりを迎えたのである。

サポセンはオープンの2年前から市民、学識経験者らとさいたま市との協働によって準備され、3つの理念と6つの機能がミッションとされた。その結果として、運営団体は市民団体であることとなり、全国的に見ても市民と行政の協働のモデルケースとして注目を集めた施設であった。

1日1千人以上の来場者があり、約250席のミーティングスペースが、予約なしに自由に何時間でも使える、また、印刷機、パソコン、プロジェクター等の貸し出し機器類も充実しており、印刷室は予約制をとらなければならないほど盛況であった。

では、現在はどのような状況であろうか?

ここでは私たちの現状認識よりもさいたま市の所見を優先させよう。
さいたま市が市議会に報告した2018年3月の資料によると、
1.指定管理者制度から直営にしたのは、
① 設置主体としての市の責任の不明確さがあった
② 管理基準等の未整備による不適正な管理

が、あったとされ、現在は「新しい管理基準」を策定して運営されている。としている。

ただし、
2.課題・弱みとして
① ソフト事業の実施が不十分であること。
・団体の運営方法などについての専門的相談対応。
・団体のニーズや市民活動の潮流を把握し、反映したセミナーやイベント事業
② 施設の効率的かつ効果的な運営が困難
・単年度契約による窓口等業務委託のため、ノウハウが蓄積されにくい
・担当職員を配置するため運営経費として職員人件費が必要となる。

としている。そして指定管理の時よりも約2400万円、多く人件費がかかっているとしている。(28年度の経費は82,183,000円)

1の指摘については、指定管理者であったさいたまNPOセンターとしては、後付けのとってつけた理由であって、ことの本質は2015年6月15日のさいたま市議会でのA市議の発言にあると考えている。

① 「原発埼玉県民投票準備会」や「九条の会」「ねつ造慰安婦問題をただす有志の会」といった団体はサポセンの登録団体ではないのか?県に請願活動などをする団体は市民活動団体ではない。立派な政治団体だ。
② 政治的な活動をする団体が公共施設で活動することを我々は非常に問題だと思っている。
③ これは運営の制度のやり方に問題がある。これまで指定管理者制度で運営してきたが、直営にして整理したほうがいい。

と発言した。これに対してさいたま市長は「現状については調査をして把握していきたい」といっていた。

しかし、10月4日にさいたまNPOセンターが企業も交えた指定管理者の選考で最高得点を取ると、A市議は、翌10月5日に「サポセンの利用団体のうち14団体の資料を出し、「原発埼玉県民投票準備会」は埼玉県議会に請願をしたが、これは立派な政治活動だろう」「デモをやっている『九条の会・さいたま』は自公政権に対する批判を繰り返している。これは政治活動ではないのか」などとサポセンを利用する団体が政治活動をしているのは問題だ」とする演説を再び行った。そして、2014年度の決算報告の承認を条件に「サポセンの適切な管理運営を求める附帯決議」をつけ、サポセン条例を改正したのだった。

議会運営にたけた早業だった。そして条例が改正されたのち、さいたま市は、2016年2月に「弁護士に相談したが14団体はサポセンを使用するに問題はない」としたのである。

そして2年後、前述の市の説明資料の2「課題、弱み」のとおり、公共施設としてのミッションが果たせていない、税金の無駄遣いが明らかになっているのである。
この責任はA市議らがとるべきだと思われる。また、決算の承認を「人質に取られた」とはいえ、行政のあまりのA市議への追随ぶりに、現在の「加計・森友」の官僚の対応とつい重ねてしまうのは私だけではないだろう。

さいたまNPOセンターは、「一般財団法人 地域生活研究所」の助成を受けて、1年間かけて、8年半の*「さいたま市型協働管理運営・市民運営の検証およびその可能性と限界の考察」と題する調査・研究を行った。利用団体へのアンケート、関係者のヒアリング、8年半の運営記録に残っていた市職員とNPO職員とのアンケートを参照し、12人が参加してまとめ上げた。執筆は平修久聖学院大学教授が中心に行った。

結論から言うと「協働管理運営・市民運営」は新しい「公共を創造したといえるとともに、市民による公共施設の運営ばかりでなく、市民による市民活動支援が十分に可能であることを実証した」

「しかし、市民との論議なしに議会の判断や行政の方針転換により一方的に中断・終了に追い込まれる可能性があり、それに対する手段を私たちも利用市民も十分に持ち合わせていない」としている。

今、さいたまNPOセンターは、さいたま市議会との関係性を太くしていきたいと考えている。市議にまずNPOの役割やその成果を理解してもらうこと。施設運営だけでなく、20の活動分野でNPOが日々活動していることを理解していただきたいと思っている。

現在は自民党の会派は2つに分かれており、A市議の会派は第1党派ではなくなった。
しかし、A市議の「NPO嫌い」は相変わらずである。彼を変えることは無理だが、「党議拘束をかけられたから投票してしまったが、A市議にうまく利用されてしまった」と考えている議員がいることは事実である。

今回の「事件」は、「協働」は行政職員とだけでなく、市議にも理解者を増やしていくことがなければ成り立たない、という気づきを私たちに与えてくれた。その努力を怠っていたと思う。

「政治家」とどう付き合っていくのか、
「政治家と政策で協働していくためにはどうしたらいいのか」。
さいたま市ではその模索が始まっている。

*この研究成果をまとめた冊子は頒価1000円で発売中。お問い合わせはさいたまNPOセンターoffice@sa-npo.orgまでどうぞ。

参考
【意見表明】「市民活動団体による活動を不当に制限しようとする動きへの懸念」 ~さいたま市議会の市民活動サポートセンターに関する条例案可決を発端として~