2018年5月31日~6月1日にCIVICUS AGNA(※)の年次総会に出席するためジョージア(旧称:グルジア)の首都トビリシに行ってきました。CIVICUSは全世界で175の国や地域に4000人ほどの会員を擁する国際的非営利組織で、「世界中の市民活動や市民社会を強化することを目的にした市民社会団体や活動家の世界連盟」です。CIVICUSは、民主主義(社会)への参加や市民社会における権利擁護を通じた公正で包括的、持続可能な世界(づくり)をめざしており、毎年『CIVICUS Monitor』という市民社会や市民の自由に関する各国の情報をリアルタイムに伝えるオンラインプラットフォームを運営したり、毎年『State of Civil Society Report』という世界の市民社会に関係する大きな出来事や潮流をまとめた報告書を発行しています。

AGNAはAffinity Group of National Associationsの略で、CIVICUSの中の、各国/地域で非営利団体支援を行う全国組織のネットワーク体です。日本NPOセンターは準会員として参加しました。

今回の総会に参加したのは約30か国。いわゆる北側の国からの参加は少なく、ラテンアメリカ、アフリカ、中央アジアなどからの参加が多かったのが特徴的でした。正直なところ、国名を聞いてもどこにある国なのか、イメージが湧かない国も多く、まだまだ欧米志向の自分の狭さを思い知ると同時に、市民社会を支える非営利組織を支援している人たちの広がりを感じた二日間でした。

総会では、昨年度の取り組みや今年度の計画、AGNAのメンバーシップのあり方、ネットワーク強化方策、AGNAの役割などが議題となりました。なかでも皆さんにご紹介したいのが、市民社会への資源提供に関する世界的潮流についてです。ポイントとして6つのことがらがあげられました。日本の状況にひきつけて、私なりのコメントつきでご紹介させていただきます。

資金が“最前線”で活動する団体のもとに届かない。
⇒もっとも資金援助を必要としている草の根団体にお金が回っていかないという問題。

多くの国の政府は、他国の資金源からの流入に規制をかけている。
⇒特に人権が抑圧されている国では、政府の他国からの影響力を排除したい意識が見え隠れする。
⇒伝統的な援助セクター(欧米の大規模財団などのイメージ)の支配的な経営モデル(財団などの方針に支援先を従わせるようなやり方)は支援制度や長期的な変化に深刻な制限をかけるものとなっている。日本NPOセンターが標榜する伴走支援や組織基盤支援などがセットになっていることの重要性をあらためて認識させる留意事項といえる。

市民社会団体(CSO)が資金などを提供するもの(団体/人など)に過度に依存しがちな傾向がみてとれ、そのことで市民社会組織の価値が薄れてしまう可能性がある。市民社会団体を標榜するならば、自らのミッション/パッションを優先し、資金提供団体等におもねるべきではない、という警告に読める。政策提言やアドボカシーへの一般的な寄付やプロジェクト向け資金調達は一夕一朝に増えるものではない。
⇒目にみえにくい提言や権利擁護の活動などに寄付等があつまりにくいのは、日本だけではないことを再確認。しかし、これこそがNPOのNPOたるゆえんではないか?

急速に発展している(途上)国では個人からの寄付の増加の余地が高い。
⇒これまでのように(先進国の)政府や企業、財団などだけではなく「個人」をターゲットにした募金活動が必要、という示唆と受け止められる。

また総会では、CIVICUS AGNA内で現在行われているLTAという興味深いプロジェクトの紹介もありました。プロジェクト名はLegitimacy, Transparency and Accountability の略字で、直訳すると市民社会団体の「正当性、透明性、説明責任」を高めるためのプロジェクトということになります。各国の実践や経験、よい実践の共有を通じて、AGNAのメンバー間の協働や能力強化(キャパビル)を促進させ、LTAのインパクトを高めようとしています。昨年は11月8日にGlobal Civil Society Accountability Dayという世界の市民社会団体自身の説明責任の取り組みに関する啓発的な運動をTwitterなどソーシャルメディアを活用して行っており、今年も秋に実施する予定だそうです。日本NPOセンターもこのような国際的な動きに何らかの形で連携できないかと考えています。

その他にも参加者全員で行ったグループワークでは、AGNAや各参加団体の最重要課題として、ネットワークの会員の『参加』をどう促進し、高めていくのか、という課題が浮き彫りになりました。「参加」の課題は日本国内のみのイッシューと考えていたのですが、各国で事情は違えど南北を超えて世界各国の市民社会の推進における共通課題であることを実感してきました。

https://www.civicus.org/index.php/what-we-do/strengthen/agna

日本NPOセンター機関誌 NPOのひろば83号より転載