11月22日と23日の両日にわたり開催された市民セクター全国会議2018には、全国から200名を超える参加者が集いました。「協働」「評価」「参加」「基盤」「地域」という5つのテーマで、15もの分科会が設けられ、それぞれの分科会では活発で熱い議論が繰り広げられましたが、その中から私がコーディネーターを務めた「分科会15 地方議会との対話 ~政策協働していくためには~」の概要をご紹介したいと思います。

現在、多くの地方自治体では「NPOとの協働」を重要な政策課題としており、協働の推進を目的に「条例」や「指針」、「マニュアル」などを策定して、それに基づき様々な施策を実施しています。こうした協働政策は、これまで有効に機能してきたと思いますが、最近、どうもこれだけでは不十分ではないかと思える事例が幾つか出てきました。

それは、これまでNPOが考える協働の相手側は、地方自治体の首長であり担当部署や担当職員であったわけですが、日本では地方自治体の執行機関の長である首長と、意思決定をする議事機関の議会議員をそれぞれ住民が直接選挙で選ぶ二元代表制となっています。NPOが執行機関と協議をして進めてきた協働事業が、議事機関である議会により覆される、またはスムーズに運べなくなるという事例が見受けられるようになりました。どうやら「NPOと行政の協働」は、執行機関だけではなく、議会との協働も考える必要があるのではないかというのが、この分科会を設けた趣旨でした。

スピーカーは、特定非営利活動法人さいたまNPOセンター・専務理事の村田恵子さん、特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター・事務局長の小林芽里さん、新潟県議会議員の秋山三枝子さんの3名です。村田さんには、正に議会との関係でぎくしゃくした「さいたま市民活動センターの指定管理者に関する問題」の顛末とその後の市議会との関係について、小林さんには、2013年度から浜松市で行われている「議員と語ろうNPO円卓会議」について、秋山さんは、新潟県上越市で活動するNPO法人くびき野NPOサポートセンターの元理事長で現在は新潟県議会議員であり、NPO側からみた議会と議会側からみたNPOという両面について、それぞれお話をいただきました。

お三方からのプレゼンテーションの後、会場参加者との質疑と意見交換に移りました。「指定管理者制度によるNPO支援施設の運営は協働と考えるべきか」「NPOとの対話に参加する議員の懸念点は何か、それを払拭し、より良い関係性をつくるための秘訣は何か」「請願や陳情などを受けた後、それらを議会内部ではどのように扱っているのか」「NPO側から見ていた議会と、議会側から見たNPOとの違いは何か」など、難しい内容もありましたが、3名のスピーカーの絶妙な組み合わせが功を奏して、質の高いやり取りが1時間余り続きました。

参加者からは、「今回のフォーラムには、この分科会があるからこそ参加しました」「めっちゃ面白かった、こういうテーマは今までどこでもやってないから」「知らないことが多くて、とても刺激的な時間でした」「地域で学生と議員との話し合いの場をつくっていますが、大いに考参になりました」など、主催側が予期していなかった反応もあり、参加者の満足度はかなり高かったと思います。

現在行われている議会側から市民・NPO側への報告会や説明会などの機会に比べて、市民・NPO側から議会側に向けての対話の場については、事例も少なく手探りで進められている状況でしたので、今回の分科会での議論は、NPOと議会との発展的な政策協働を進めるためにはに大いに参考になったのではないかと考えます。しかしながら最も重要なことは、参加された皆さんが今回の議論をそれぞれの地域に持ち帰っていただき、その地域に適した方法で「市民・NPOと地方議会との対話」の機会をつくっていただくことだと考えます。色々と難しい面はあると思いますが、ぜひチャレンジしていただければ幸いです。

最後に、とても深い議論ができましたことについて、ゲストの皆さんと会場の皆さんにお礼を申し上げますとともに、運営にご協力をいただいたボランティアの皆様に心からの感謝を申し上げます。