昨年3月11日の東日本大震災から1年と1カ月が経過し、被災した地域では地域差こそあれ少しずつ復興に向けた取り組みが進んでいる。しかし、約34万4千名の方々がなおも不自由な避難生活を余儀なくされている状況には大きな変化がないのが現状である。また、1年以上の時間が経過した現在でも、7万2千773名の方々が従来生活していた岩手、宮城、福島の3県を出て47都道府県の1千2百以上の市町村において避難生活を送られている。(4月11日復興庁発表)

これら県外で生活する避難者(以下、広域避難者)の内、約6万2千名が福島県の人々で、原発事故の影響によるものであることがうかがえる。目に見えない、匂いもない、放射能の影響に危険と不安を感じて自らの住居を離れ、遠くで避難生活を送る人々は、必ずしも避難指示が出された30km圏内の人々だけではなく、それ以外の地域から自主避難する人も含む。それに加え福島県以外から自主避難する人も少なくないようだ。この実態をどう受け止めるべきか。

先日ある人と会って話をした際に、広域避難者支援をする団体へのサポートの話をすると、「自主避難している人たちへの支援は否定しないが、自分の意思で避難されているのだから、公費を使ってまで支援すべきか疑問だ」という言葉が返ってきた。この反応には言葉を失った。確かに自主的な判断での避難かもしれないが、子どもを守りたい、不安な中で生活すること、自分だけが地域を離れること、今後の生活のことなど、さまざまな苦悩と不安を抱えつつもやむを得ず県外への避難を選択されたのが実情で、決して自主判断という言葉だけではすまされるものではない。

そんな同じ思いを持つ民間の力が、全国各地で動き出している。自らの地域で避難生活をおこなう人々への生活支援として、各種の電話相談や避難者同士が集まる機会の提供など、各地ともに民間ゆえの自由な発想ときめ細やかな工夫を凝らした取り組みがなされている。また、注目すべきはその担い手が、子育て支援のNPOや災害系NPO、NPO支援組織といった多様なNPOはもとより、弁護士のネットワークや生活協同組合、企業など多岐にわたるということである。地域によっては、それらの多様な組織が連携して取り組みを行う例もある。また最近では、避難者自らが自発的に組織を立ち上げ、相互に助け合う取り組みも始まりつつある。

実態として広域避難者に対する公の支援は、受け入れの地方自治体にゆだねられている部分が多く支援の取り組みにバラつきがでている。そのような中での民間による取り組みは、広域避難者の方々の拠り所となっているものの、継続的かつ長期的な支援を考えた場合に、個々の取り組みを支える財源は厳しい状況にあるのも現実である。

自主避難者も含む広域避難者を長期的に支え・寄り添うために、国や地方自治体は、民間の企業やNPOは何をすべきか?そして市民一人一人が何ができるのか?改めて考えなければならない時期が来ている。