6月の総会を終えて夏になると、日本NPOセンター事務局は会員企業への訪問シーズンになります。昨年度の報告と新しい事業計画、また各社の社会貢献・CSRのトレンドについて意見交換を行います。

肌感覚で大きく変化していると思ったことが、社内での「SDGs」(*1)の浸透度合いです。各社の統合レポートでは、SDGsのロゴがみられ、各17のゴールに分類分けなどもされています。また、SDGsピンバッジを付けている方が増えました。ピンバッジもマグネット型・間伐材を利用したものなど種類も多様化しています。

意見交換のなかで、特に印象的なことは、「これまで社会貢献は、本業と分けられた独立性がある事業や部署だったのが、いまでは、サステナビリティというキーワードで本業を活かした事業に変化している」という話でした。

(*1)2015年9月に国連が開催した「SDGs採択サミット」で加盟国・地域の全会一致で採択された。2030年を達成期限とする17のゴール、169のターゲット、および、その進展を評価するための指標を持つ包括的な目標で、「世界の貧困をなくす」ことと「持続可能な世界を実現する」ことをめざす。(参考:一般社団法人SDGs 市民社会ネットワークHP)

加速する政府・経済・国際的な取り組み

SDGsに関する各セクターや国際的な動きみていくと、日本政府は、2016年に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を内閣総理大臣が本部長となって設置し、今年、SDGsアクションプラン2018が策定されました。経済界では、日本経団連が、Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として、企業行動憲章を改定。政治・経済が一体となって、SDGsの推進に取り組んでいることがわかります。

国際的な動きとしては、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムThe High-level Political Forum(HLFP)」が毎年開催され、「持続可能な開発目標(SDGs)」の進捗状況の把握とともに、課題や事例について議論する場が設置されています。今年も7月9日から18日にかけ、1000人を超える各国政府、企業、市民社会のリーダーたちがニューヨークの国連本部に集ったとのことです。

持続可能な開発のための 2030 アジェンダの前文を読む

しかし、世界的な動きが加速する一方で、ひとつの懸念があります。「サステナビリティ」が最も優先され、持続可能な開発のための 2030 アジェンダの前文に書かれている「誰一人取り残さない」が置いてきぼりになっていないかということです。

あらためて、持続可能な開発のための 2030 アジェンダの前文をここで紹介したいと思います。

「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求ものでもある。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。

すべての国及びすべてのステークホルダーは、協同的なパートナーシップの下、この計画を実行する。我々は、人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にすることを決意している。我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う。」

最も遠くに置かれてしまっている人たちに届くように

7月に開催されたハイレベル政治フォーラムでのアントニオ・グテーレス国連事務総長の閉会挨拶(*2)では、SDGsの取組が広がっていることに対しての評価や期待が述べられる一方で、“誰も置き去りにしない”という共通の誓いにおいて基盤となる分野で、立ち遅れている、あるいはむしろ後退していることも明らかになったという発言がされました。

「誰一人取り残さない」は、市民社会が最も大切にしてきた普遍的な価値です。「誰一人取り残さない」と「サステナビリティ」を実現するためのパート-シップを、市民社会が主体となって実現していきましょう。

前文第4条の締めくくりの言葉は、「We will endeavour to reach the furthest behind first.(最も遠くに置かれた存在の人たちに、最初に届くように努力する)」とかかれています。

(*2)持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム 閉会における 事務総長挨拶