「2014年」の年頭を迎えるばかりなのにこの稿のタイトルが「2015年」なので、オヤっと思った方もおられるかと思います。しかしこれは間違いではなく、私たち国際協力NGOが2015年に予定されている二つの重要な国際的イベントに向けて、すでに走り出しているからです。ミレニアム開発目標(以下MDGs)は、2000年9月の国連総会で採択された「ミレニアム宣言」を土台に、世界の貧困を2015年までに1990年に比べて半減するという、画期的な開発目標です。具体的には、貧困削減に加えて保健や教育、ジェンダー、環境やパートナーシップといった8つの目標と、それらに対応する21のターゲットと60の指標を掲げています。
このMDGsの達成状況を国連が継続的にモニタリングしており、最近の報告によると、中国の経済成長のお蔭で貧困の半減は達成できること、HIVなどの感染症対策や初等教育などの分野で相当の成果を挙げたことが明らかになっています。一方、所得格差が多くの国で拡大したこと、妊婦関連の分野の進歩が小さかったこと、平均値を見ると成果があった分野でも少数民族地区などでは進歩が少なかったこと、先進国と国連幹部がトップダウンで目標や指標を決めたことなどの指摘や批判がなされました。とりわけ途上国が問題視したのは、「ODA拠出額をGNI(国民総所得)比で0.7%にする」という指標を、日本を含めた大半の先進国が守らなかったことです。
2016年以降のグローバルな開発目標、いわゆる「ポスト2015年開発枠組み」を、2013年9月の国連総会で決めるために、国連や先進国政府は準備を着々と進めてきました。例えば2011年末頃から、日本政府はアメリカ政府などと一緒に国際会議を繰り返しました。国連事務総長も、2012年7月に世界の30人の知識人からなるハイレベルパネルを組織し、そのパネルは2013年5月には具体的な開発目標を織り込んだ詳細な報告書を作成しました。
ところが2013年を目指したこの動きに、2012年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「国連・持続可能な開発会議」が急ブレーキを掛けた形になりました。1992年に同じくリオで開かれた「地球サミット」から20年を経て開催された「リオ+20」と呼ばれるこの会議で、コロンビアなどの途上国政府の提案によって、2016年以降を対象に「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)を設定すること、それをポストMDGsと整合的な形で策定することが決まったからです。現在、このSDGsの具体的な内容を作るために、ニューヨークを舞台に様々な課題について合計8回の会合が開催されています。
この連続会合や関連会議の報告書が2014年9月の国連総会に提出され、さらに国連事務総長はそれらをまとめた総合報告書を、2014年末までに作成する予定です。そして2014年終盤から2015年前半にかけて、国連加盟国政府間で協議が繰り返され、2015年9月の国連総会時に開催されるサミットで最終決定することになっています。つまり、焦点は一挙に2015年9月の国連総会に移ったことになります。
私が理事長を務める国際協力NGOセンター(JANIC)を含めた世界の市民社会組織、いわゆるNGOは、「ポスト2015年開発枠組み」に向けて、貧困の根絶を目指すこと、人権をベースとすべきこと、格差是正を指標とすること、障がいの問題を含むことなど様々なアドボカシー(政策提言)を繰り返してきました。これまでのところ、これらの少なくない部分が受け入れられましたが、今後どうなるか予断を許しません。
もう一つの重要なイベントは、2015年3月に仙台で開催されることが決まった第3回国連防災世界会議です。その準備プロセスが2013年から始まっており、JANICや日本NPOセンターなどは共同で、「2015防災世界会議日本CSOネットワーク」を立ち上げます。NGOとNPOが協働するこのネットワークでは、2015年3月の防災世界会議において、日本の市民や人々が東日本大震災にどう対応したのかをお伝えすること、そして、国連をはじめとした国際機関が福島の原発災害をより積極的に取り上げるべきと訴えることが、主な目的です。
これらの動きについて、NPOの皆さんの参加やご理解とご支持をお願いしたいと思います。