日本NPOセンターでは2023年から、一般財団法人児童健全育成推進財団の協力、損害保険ジャパン株式会社の協賛を得て、児童館が行う災害時の要配慮者を包摂した防災・減災の取り組みを支援する「つながる防災プロジェクト」を実施しています。
プロジェクト名に「つながる」と冠している通り、0~18歳の子どもたちが誰でも利用することができ、遊びを通して子どもが生き生きと育つ場づくりをしている児童館の特性を活かし、さまざまな地域の人たちがつながり、「誰ひとり取り残さない」防災・減災の取り組みを行うものです。
先日、第3期となる2024年度の完了報告会を実施しました。
各児童館の報告からは、この取り組みを通して以下のような学びを得ることができました。
- 当事者の発見、当事者からの学び
医療的ケア児、アレルギー児など特定の対象を想定したプログラムを通じて、地域の中に当事者がいること自体が認識され、どういうところで困るのかが共有された。 - 子どもたちの創意工夫による発見
子どもたちと防災訓練をする中での子どもの視点からの気づき。非常食は飽きるのでアレンジを工夫する、身を守るために推奨されている「ダンゴムシのポーズ」を取ることは大規模地震の中では簡単ではないということへの気づきから代わりになるポーズの模索など。 - 地域の人たちの協力
地域に働きかけていく、協力を求めることで生まれた思いもかけない協力者の広がり。防災や要配慮者への関心の高さと、ともに考える機会を作ることで地域のさまざまなステークホルダーとつながることができる可能性の発見。 - 地域の企業とのつながり
地域の企業の地域貢献意識の高さの一方で、具体的な地域活動を実行するためのハードルの高さ。呼び掛けることで出番を作り、協力を得ることができる。
こうしたことが、子どもたちとともに、1人1人の興味・関心、好奇心や疑問をもとに創意工夫をした結果、各地で生まれています。
何より、包摂的な被災者支援を模索しながらも「災害時でも子どもの遊び場を閉じない」という視点を大事にされていることには感銘を受けました。体育館が避難所になったり、校庭に仮設住宅が並んだり、公園がゴミ置き場になったりと、災害時には往々にして子どもたちの居場所が犠牲になります。そのような状況下で児童館が「遊び」の観点を忘れないことは、災害時の子どもの居場所を守る上で非常に重要な観点だと感じました。
このプロジェクトで掲げる「要配慮者」について、災害対策基本法では「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」と定義されています。しかし、「その他」があるように要配慮者の定義はとても難しいものです。定義をすると、必ずその定義から外れる人が出てしまいます。そもそも必ず想定外が起こるのが災害で、想定外に対応することが求められます。
そこで大事なのは、
- 「気になる」という他者へのアンテナ、想像力を育むこと
- 「何かできないか」と考える思考を育むこと
- 「できることがあるんだ」という体験を得ること
の積み重ねです。
それは、ひいては日常生活での安心・安全、さらには包摂的な地域づくりにもつながるのだろうと思います。
つながる防災プロジェクトの事例は、いずれもそういうサイクルが生まれています。ふだんのくらしの中で、もしくはその延長線上で、地域の人たちと、楽しみながら取り組みを作れる児童館とNPO、地域に密着した損保ジャパンの地域拠点が協働で実施する、この枠組みだからこそできることがあると可能性を感じることができました。
最後になりましたが、本事業は企画段階から、児童健全育成推進財団、損保ジャパンと一緒に検討をしてきました。改めてお礼を申し上げるとともに、これからも各地の児童館の皆様も含めて、関係者で学びあいながら、よりよいプロジェクトに育てていければと思います。