エイブル・アート・ムーブメントは一般財団法人たんぽぽの家が1995年に提唱し、その後全国に広がっていきました。今年で30周年を迎えるということで、京都市京セラ美術館を会場に、3日間かけて記念フォーラムが開催されました。その初日に伺ってきました。

エイブル・アート・ムーブメントが「ムーブメント」と称し、これを「可能性の芸術運動」と訳していることは注目すべき点です。たんぽぽの家はエイブル・アート・ムーブメントを「障害のあるなしにかかわらず、社会的に弱い立場にある人のニーズから社会を構想し、オルタナティブな生のあり方を提案する市民芸術運動」(たんぽぽの家ウェブサイトより)であるとしています。言い換えると障害者アートにとどまらず、固定化された概念や関係性への問題提起であるともいえます。

30周年記念フォーラムの冒頭、京セラ美術館の青木館長が挨拶に立たれ、エイブル・アート・ムーブメントを「不完全と不完全が掛け合わさる、暗中模索のプロセスを楽しむもの。ふれあいの中で視点が更新される場であり社会環境」「障害者のアートではなくあらゆる人の表現の可能性を拓く。アートをエイブルにするものである」と表現されました。

昨今、SNSなどでは何かと極端な立場、極端な主張同士で対立をしがちな風潮を感じます。しかし物事の本質はたいてい極ではなくその間にあり、対話を通して新たな視点を発見していくのが豊かな市民社会への道筋だと考えます。
アートを通じて問題提起し、コミュニケーションを促進し、新たな価値観を得ていく取り組みが、すべての人の可能性を拓くことにつながっていく。
エイブル・アート・ムーブメントの30年の歩みに敬意を表し、これからも注目していきたいと思います。