最近、日本NPOセンターの業務のなかで、海外で行われる国際会議に出席する機会が増えている。海外のNPOと接するなかで、日本のNPO・市民セクターのあり方への示唆を与えられることが多い。特に刺激を受けるのは、こういった国際会議に参加している多くのNPOの人たちは、それぞれの国を活動拠点にしているにもかかわらず、国際的な潮流を見据えた動きのなかで自分たちの活動をとらえているということだ。感覚的な表現になるが、こういった参加者と知り合い意見を交わし「顔」が見えるようになることで、その国との「心理的な」距離がグッと縮まったり、同時に自分のなかで形づくられていたNPO・市民セクター像が崩れ、新たな地平線がパッと開けるのを感じる。彼ら・彼女らは肌感覚として、自国を超えた連帯感(solidarity)であったり、地球市民社会(Global Civil Society)という意識をもっているのだ。また、国際的なネットワークを活用した、一国主義ではない、周辺国と連携・連帯した大きな動きをつくろうとしている。

こういったことを目の当たりにすると、自分自身を含め日本のNPOが自国の市民社会を超えたものを想起できているのだろうかといった反省を迫られる。また、これまで海外のNPOの実践は自分にとって「未開の地」であり、彼ら・彼女らの知恵やリソースの蓄積といった実践知に触れたことはなかった。そのため、話す前は、日本との地理的・経済的・歴史的な違いから共通点は少ないだろうといった思い込みがあったのだが、最近は、共有すべき課題や、そこから連携できることが案外あるのではないかと感じ始めている。

ひとつ例を挙げよう。日本NPOセンターはNPOの情報開示のしくみとして全NPO法人を網羅するオンラインデータベース「NPOヒロバ」を運営しているが、NPOの自主的な情報公開をいかに促進していくか、また今後のデータベースの在り様をどう考えていくかについて頭を悩ませることが多い。こういった話を同様のデータベースを運営する他国の参加者と話し合う機会があったのだが、彼らも日々の情報追加・更新に苦心していたり、どういった情報を開示することが市民セクターの信頼性向上につながるのかといった問題に直面していることを知り、こういったテーマ別課題はなにも一国に限定されるものではないのだという、ある意味当たり前のことに気づかされた。こういった話し合いを深めることで、国を超えた情報交換や何らかの形の協力体制が構築できないかという話に発展する可能性があるのではないかと思う。

現在日本NPOセンターはいくつか海外との連携事業を持っている。一つは米国サンフランシスコの社会的企業である TechSoup Global と連携した非営利団体向けソフトウェア無償提供プログラムで、日本では2009年から テックスープ・ジャパン として実施している。これまで日本国内の2,850の非営利団体に対し、市場価格に換算して約17億5千万円以上のソフトウェアを寄贈仲介してきた。また Give2Asia という米国のフィランソロピー団体と連携した助成(グラント)事業も行っている。これは米国の企業財団や篤志家の寄付金をもとにアジアの非営利団体の活動へ助成(グランティング)を行う事業だが、日本向けの仲介を2010年から日本NPOセンターが担っており、これまで50以上の日本の非営利団体へのコーディネーションを行ってきた。

このような事業を通して、この数年日本NPOセンターは海外からの資金的・物的リソースの仲介を積極的に行っていると言える。その他にも2009年より毎年開催されている東アジア市民社会フォーラムや2015年に仙台で行われる予定の第3回国連防災世界会議に向けて設立された2015防災世界会議日本CSOネットワークへの参画(詳細は前回の大橋副代表のコラムをご参照ください。)といった国際的な取り組みにもかかわっている。

こうした個別の事業があってNPOの国際会議に出かけて行くのだが、最初に書いた「刺激」は、事業がなんであれ、海外のNPOの人々と接するなかで初めて実感として感じられるものである。日本NPOセンターの中長期ビジョンの柱のひとつに「海外のNPO等との連携の強化」があるが、このビジョンに向かってどういった事業展開を志向していくかが現在問われている。それがどう具現化されるにせよ、日本のNPOが日々の業務のなかで、国際的な潮流のなかに自らの活動を位置づけるような肌感覚を身につけられる仕掛けができればと考えている。