「参加促進の集い」大盛況

2月14~15日、6回目となる「ファンドレイジング・日本」が東京・両国で開催された。市民活動団体のスタッフを中心に、共同募金や財団の関係者、自治体の市民協働部門の職員、企業のCSR担当者など、全国から集まった参加者は実に1,200人。前日のプレイベントも含め、ファンドレイジングの実践例や理念を学ぶ60のセッションで研鑽を深めた。

一方、2月28日~3月1日には、大阪で21回目の「全国ボランティアコーディネーター研究集会」が開催された。こちらも盛況で、当初の定員250人に対して320人以上の申し込みがあった。講師・事例発表者や実行委員、ボランティアも含めると約490人近くが参加し、ワークショップなどを交えながら、26の分科会で市民の主体的参加に関わるさまざまな課題を検討し合った。

市民の社会参加を進める両輪である寄付とボランティア活動の促進に関わる2つの集会が、共に大盛況となったわけである。

参加促進は「技術」?

ところで、ファンドレイザーやボランティアコーディネーターは、それぞれ一つのスペシャリストと見なされている。さまざまな専門的知識・技術が必要であり、専門職として価値観や倫理観も求められるからだ。

ファンドレイジングで言えば、寄付の「商品化」や寄付確保のための「組織化」過程のマネジメントや寄付者・潜在支援者の分析、共感を高められるメッセージの伝え方、さまざまな寄付手法や実践事例から税制や会計などに関わる知識が求められる。もちろん、実践経験は必要だし、単に寄付を集めるだけでなく、その努力を通じて参加型の社会を築こうとする熱意も必要だ。

一方、ボランティアコーディネーターも「参加の力」を信じる点でファンドレイザーと同様の価値観を基盤としつつ、ボランティアが参加しやすく活動意欲を高められるプログラム開発、応援を求める人との共感的な関係づくり、活動意欲の維持・向上に向けた働きかけ方、ケース記録の整理方法、活動に伴うリスクマネジメントや保険制度など、こちらも幅広い知識が必要だ。

NPOの本質につながる「参加」

しかし、ファンドレイザーやボランティアコーディネーターがもつべき知見は、スペシャリストとしてのものというよりも、NPOの経営そのものに関わるものである。

そもそもNPOには、ボランティアや寄付者の「参加」を得て事業を進めることにより、参画する人々が社会課題を「自分事」として捉え、「当事者」としての意識をもつ人々を広げる力がある。P.F.ドラッカーが「NPOを通じて市民社会が作られる」(『非営利組織の経営』)と語っているのも、NPOが「参加」の受け皿としての機能を発揮した時に実現するものである。

しかも、「参加」を受け入れる力の多寡はNPOの運営そのものを問うものでもある。

ボランティアや寄付者の共感を得るには、明確でワクワクするビジョンの提示が不可欠だ。共感力のあるビジョンの提示は、NPOのトップマネジメントに関わる課題だ。またボランティアが自主的に活動を進めるには組織内の意思決定の透明性も必要だし、これはNPOを信頼して寄付を進める上での条件ともなる。市民の参加が多いNPOは、それだけで信頼性が高いとさえ言える。

誘発的組織運営に向けて

日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事は、ファンドレイジング日本2015で、NPOの運営レベルを3段階で説明した。すなわち、きちんとNPOを運営する「NPO1.0」、ファンドレイジングなどにより参加を得て事業を進める「NPO2.0」、そしてボランティアや支援者などNPOに関わっている人々が自発的・誘発的に改革や創造を始める“誘発的イノベーション”が起こる「NPO3.0」だ。リーダーの予想を超えて、ボランティアや支援者が自主的に活動を広げていく状態こそは、NPOのイギリス英語表現であるVoluntary Organisationの理想的な姿だとも言える。

そう考えると、ファンドレイジングやボランティアコーディネーションなどによる自発的参加を支える能力は、NPOのトップマネージャー自身が身につけなければならない能力だとも言える。ファンドレイザーやボランティアコーディネーターの経験者が事務局長や団体の代表者などとして活躍する時代は、そう遠い未来ではないように思う。