今年は阪神・淡路大震災から20年である。もう20年、まだ20年。今年は1月17日が土曜日だったこともあり、各地で思いを馳せる集いが行われた。そのあまりにも多くの犠牲と、ショッキングな被災地の映像は、多くの人を自発的な支援活動に駆り立てた。思い起こせば、私のボランティア初体験も阪神淡路大震災だった。

その後、草の根のボランタリーな活動を支える仕組みが必要だという認識が広がり、間もなくしてNPO法が成立。国内では介護保険制度が開始、国際的にはCSO(市民社会組織)という用語が国際機関のダイアローグの相手の呼称として使われ始め、地域の自治、社会課題の解決に、市民が主体的に関わることが重要であるという考え方が広がった。

この20年、多様なNPOが生まれ、苦労をしながらも1つ1つの活動を積み上げてきた。東日本大震災でも多くのNPOが活躍し、後押しする制度も整えられた。地域でも多くの人の生活を支え、なくてはならない存在になっている。着実に、社会に成果をもたらすことが求められている。

そのような中、先般、あるNPO法人のスタッフによる業務上横領事件が新聞紙面をにぎわした。いち法人のガバナンスの問題と言えばそれまでだが、我々にとってもショックの大きい残念な事件である。

多様な人から支えられて成り立っているNPO法人にとって、信頼性の確保は生命線である。
NPO法では監事を置くことや、事業報告書・会計報告書を公開するなど、不正を自浄するための仕組みは想定されている。しかし、仕組みが整っていても、それがおざなりになっていては意味をなさない。

NPO法人には小規模な団体が多く、事務局員は1名のみという体制は珍しいことではない。限られた人員で最大限の成果を出すためには、管理部門はできるだけ軽くし、少しでも活動を充実させることに労力を割きたいという考えもあるだろう。

しかし、それぞれの組織に合った形で不正ができない仕組みを持つことは、法人としての最低限の責務である。例えば日本NPOセンターでは銀行印を鍵付きの収納庫に入れ、会計担当者だけでは取り出せないようにしている。属人的な管理ではなく、仕組みとして整えることが重要である。

公益認定等委員会が各法人のとるべき対策をまとめた『事例から学ぶ財産管理』を発行しているが、こうした資料も参考になろう。支援者に責務を果たし、社会に必要とされる活動を継続していくために、また、担当者を守るという意味でも、自ら、運営のあり方を再確認することが求められているのではないだろうか。