社会課題のグローバル化やボーダレス化が言われて久しい。課題解決のヒントやリソースは、同様の取り組みを行っている海外の団体が持っていたりするものの、その存在を知らなかったり、知っていても言語や文化などの違いなどもあり、日本と海外の団体(NPO)交流はそれほど進んでいないのではないか。日本NPOセンターは、海外とのつながりの中で、国内外で共通の社会課題に取り組んでいる団体との知見の共有に力を入れていきたいと考えてきた。それを実現しようとしたのが「地域人材の日米交流プロジェクト」である。

「地域人材の日米交流プロジェクト」は、日米の共通課題の解決に向けた知見の共有やノウハウの相互学習を目的に、過去数年にわたり行ってきた取り組みだ。2020年度は、地域コミュニティのニーズや知識をもとに課題解決のためのITツール開発を世界各地で行っている米国のCaravan Studiosと共同で、「地域の高齢化」をテーマに約半年間のプロジェクトを実施した。Caravan Studiosが長年実施し、蓄積してきた「コミュニティ主体のデザインアプローチ」を、国内の地域で活動する活動家に体験してもらい、それを各地域で独自に展開してもらうという立て付けだ。この手法の特長は、IT専門家や技術者ではなく、地域コミュニティが自ら地域の課題やニーズを把握し、その課題を解決する方法やITツールをデザインすることにある。今回、日本各地のNPOのリーダーのほか、行政、大学、シビックテック関係者8名に地域コミュニティの代表としてこのプロジェクトに参加いただいた。

プロジェクトが始動する段階で新型コロナウイルス感染症が拡大したこともあり、本来は対面のワークショップで行う手法をアレンジし直し、すべての工程(個別ワークとワークショップ3回)をすべてオンラインで実施した。プロセスとしては、参加者に活動地域の課題やリソースなどを調べてもらう「状況の可視化」から始まる。それをもとに「私たちはどうしたら○○できるのか?」という形式の問い(デザイン・クエスチョン)と、それに答えるアイデアの生成、最後に選ばれたアイデアをベースにした簡易版アプリ(ローファイ・プロトタイプ)のデザインというステップだ。

3回のワークショップを経て、8名の参加者はローファイ・プロトタイプを完成させてくれた。もちろんこれらは技術面を考慮した完成版ではない。ただ、IT専門家・技術者ではない、地域の社会課題に深くかかわる専門家だからこその視点に溢れている。考案されたアプリは実に多種多様で、それぞれの地域の実情に根差しつつも、他地域で展開可能な汎用性があり、どれも実際に使ってみたくなるもの揃い。また、一連の過程を体験した参加者からは、「コミュニティ主体のデザインアプローチ」の手法は、日本の地域やアクション計画、また組織内の業務改善など様々な場面で活用できるという心強い感想をいただいた。実際のアプリや手法については特設サイトに掲載しているので、ぜひ皆さんの目で確認していただきたい。