このところ、NPO関係者の中で『世界を変える偉大なNPOの条件』(ダイヤモンド社刊)という書籍が話題になっている。好事例から抽出した「圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則」は以下の通りで、自分自身は未読だが、表題だけ見てもうなずける内容ではある。おそらくある程度の組織規模をもつ団体について当てはまるのではないかとも思うが、関係者なら読んでみたくなる題名だ。
■影響力を持つ組織が実践する6つの原則
1.政策アドボカシーとサービス提供の両輪で取り組む
2.市場の力の活用
3.熱烈な支持者、エバンジェリストとの関係構築
4.NPOのネットワークを育てる
5.環境に適応する技術を身につける
6.権限を分担する
ところで、「偉大」とまではいかなくとも、理想的なNPOってなんだろう。研修の講師を務める時は、「社会変革をこころざしているか」「幅広い市民の参加があるか」「収入構造が偏っていないか」「民主的な意思決定がなされているか」辺りを挙げてお話しする。日本NPOセンターの中長期ビジョンの中では、5年後のNPOが目指す姿として、信頼性、先駆性、自立性、地域性、協働性、社会変革性をキーワードとして謳っていて、先の6つの原則とも重なる部分が多い。
このところ、これらの原則やキーワードに加えるべきものがあるのではないかと感じることがある。組織の活動によって裨益する方々に対する視点だ。言葉にするとしたら「受益者主体」「当事者主体」ということにでもなるだろうか。
生活困窮者の自立支援が制度化されたり、ますます生きづらい社会になる中で、対人援助のできる人材がとても求められていることを実感している。日本NPOセンターにも生活上で切実なお悩みをお持ち方からご相談の電話がかかってくる。なかなか直接的にはお悩みを解決することは難しいが、専門のNPOや社会福祉協議会などにつなげるよう努めている。ましてや地域で活動するNPOにおいてをやだ。受益者を主体にしながら援助を行うことに長けていることは理想的なNPOの条件の一つにはならないだろうか。
こうした対人援助でたいせつなのは、下図のようなインテグラル(統合的)な視点を持って当たることだと思う。統合的とは、受益者個人の内面(意識)外面(行動)、社会の内面(文化や風習、社会的背景)外面(社会システムや制度)のすべての視点を持って援助に当たることだ。メンタルケアだけを援助しても、その土地の文化や宗教、風習などを視点に入れていないと満足のいく結果が得られない。逆に制度さえ創られればすべてはバラ色ということもあり得ない。
対人援助は半ば職人芸的なところがあって、なかなかマニュアル化できない部分も多いが、少なくとも「受益者主体」で統合的なアプローチを志向していることは理想的なNPOの条件になると思うし、中間支援組織にも必要ではないだろうか。