先日、ある公設のNPO支援施設を運営するNPO支援センターのリーダーから相談を受けました。
曰く「カスタマーハラスメント対応ってどうしています?」とのこと。考えたこともなかったので若干戸惑いながらも、たしかにこれは、他のNPO支援施設などの窓口でもあるかもしれないと思い、いくつかのNPO支援施設を運営している団体のリーダーに声をかけて情報交換をしました。カスハラと一言では片づけられない現場の対応の難しさが見えてきました。当日共有されたケースをいくつかご紹介します。
- 手続きのミスがあったときに、他の来館者にも聞こえるように「どういうつもりだ!」と怒鳴られた
- スケジュールの伝達ミスによって「上の者を呼んで来い!」と怒鳴られた
- 足を痛めたので整体師を呼んでくれと居座られる
- 来館するたびに意図的に困らせるように絶妙に答えづらい質問をしてくる
- 特定の職員に目をつけてその人を困らせに来る
- 「相談にいきたい」とアポを取られ、聞いてみると支離滅裂な話が終わらない
(趣旨を変えない範囲で編集しています)
情報交換会の最初のテーマは「カスタマーハラスメント」でしたが、それに該当すると認識されていることだけでなく、むしろ受容も含めて市民の集う場としてどうあるべきかを考える場となりました。
共有された事例からは、ミスへの過剰な反応や嫌がらせと思われるケースに混じって、クレームとして表出しているけれども裏側には生きづらさや生活上の困りごとを抱えている可能性を想像させるケースもあり、福祉視点からの対応を求められる可能性も感じられます。こういったケースまで「カスハラだ」の一言で片づけてしまったり、排他的な運営になってしまうと、重要な地域の課題を見落としてしまうことにもなりかねません。
市民活動を育む拠点だからこそ、一筋縄ではいかない、カスハラの一言で片づけたくない、という思いと、過度な要求や暴力的なクレームからスタッフを守らなければならないという思いとの間で、窓口での苦労と戸惑いを感じます。一方で、そこから当事者や支援機関と関係性を作っていく前向きな面も共有されました。
先般、労働施策総合推進法が改正され、職場におけるカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じることを事業主に義務付ける規定が追加されました。スタッフを守りながらも、多様な市民の拠点として機能するよう、どのような運営をするのかは悩ましい問題です。
今後も情報交換を続け、共に考えていきたいと考えていますので、みなさんの困りごとや工夫も共有いただけるとうれしいです。
※カスタマーハラスメントだと感じた事案や対応の工夫などありませんか。もしよろしければ差し支えない範囲で編集部( news@jnpoc.ne.jp )まで事例をお寄せください。(いただいた事例は情報が特定されないように編集した上でご紹介をさせていただくことがあります。)
参考
【カスタマーハラスメントとは】
「顧客や取引先等からのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性に照らして、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不当なものであって、手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
厚生労働省『職場におけるハラスメントの防止のために』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
「労働施策総合推進法 一部改正でハラスメント対策強化」
政府広報オンライン『わかりやすい用語解説』
https://www.gov-online.go.jp/article/202510/entry-9434.html
