昨年、日本政府はSDGs実施指針を4年ぶりに改定した。2023年は、目標期限である2030年に対して中間点であり、これまでの進捗状況が注目された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナ侵攻や緊迫化する中東情勢など、国際社会は深刻な危機に直面し、SDGsの達成に大きな困難が生じている。指針では、進捗の遅れの認識が示され、多様なステークホルダーの参画の重要性や達成に向けた取り組みを力強く牽引していく決意が記載された。

市民社会については、どのように書かれているのか。今回の改定では、「世界各地の人道支援等の開発協力における存在感の拡大」や「人々の参画を促し、連帯によって、一人ひとりの行動変容と変革の旗振り役への期待」が、市民社会への期待として追記された。

では、実際にNPOはSDGsをどのように受け止めているのか。

一般社団法人SDGs市民社会ネットワークは、NPOのSDGsに関する取り組みを明らかにするために全国調査を行い、その報告書を4月に発表した。調査は、47都道府県のNPO支援組織を介して行われ、草の根団体から規模の大きな団体まで、1,181団体の回答があった。

SDGsの取り組みを行っていると回答した団体は全体の56%になったが、一方で、「表面的な取り組みになりがち」を課題にあげた団体は4割を超えた。「SDGsへの貢献は重要だと思う」という声と、取り組んでいない団体の課題意識も書かれている。
取り組みをしていない団体の理由を読むと、「地道な持続こそが大事」「グリーンウォッシュへの懸念」「ビジネスの利用の側面」「多様なセクシャリティについての明記がない」などが書かれている。こういった批判的な声こそ、SDGsの達成への取り組みを加速させる貴重なものだと考えた。

報告書には、調査結果とともに、設計に携わった委員の分析コメントが記載されている。それぞれの立場から、結果をどのように読み取ったのかという視点が、とても興味深くかかれているので、ぜひ、一読いただきたい。

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク
「SDGs取り組みに関するNPO・市民活動団体の全国調査報告書」
https://www.sdgs-japan.net/single-post/chiiki_survey23_report

1件のコメント

  1. この調査プロジェクトは、3年間の企画で進めており、2024年は、いよいよ「対話フェーズ」が本格的に始動します。
    アンケートの半数近くが、任意団体からの声でだったことは、地域のNPO支援センターの皆様のご協力無くしては、なし得なかったことであり、SDGsに対する市民社会組織(NPOや市民活動団体)の声を丁寧に、全国的に拾った初めての調査となっています。
    丁寧に対話を進めることで、「誰一人取り残さない」の解像度を上げていきます。市民参加がより進化することでのSDGs達成に寄与できればと思っています。

    新田英理子
  2. コメントありがとうございます。

    報告書のなかで、「NPOに特徴的な事例」の項目を注目してよみました。

    「人権」に対する感度が高く、複合的で多様な問題の解決にあたっているという調査結果は、市民社会・NPO・NGOの価値を可視化したものだと思いました。

    上田英司

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