NPO法の制定から20年になりました。秋田県では制定の翌年、平成11年に入り、まちづくり、地域安全、障害者支援などを設立の目的とした9団体が認証を受けています。その後も認証数は順調に増え続け、22年に認証のピークとなり44件登録されています。現在の法人数は約350団体。環境、スポーツ、就労支援、子育て支援など設置目的も多岐にわたります。20年を経過しNPOの社会的認知度が高まる中、中間支援NPOとしての役割の重大さをあらためて痛感しているところです。
今、秋田は大変です。全国一の少子高齢化、人口減少問題を抱えています。秋田県は2045年には人口が60万人、65歳以上の高齢者が50%を超えるとか。「消滅可能性都市」などと空恐ろしい指摘をされてしまいました。遠くない将来、秋田県はなくなってしまうのかと不安に駆られます。
人口減少や高齢化を止めるため、県もさまざまな策を講じて来ましたが特効薬は見つからない状況です。何年間か掛かって出てきた症状は同じ時間を掛けないと解消しないと言います。人を急に増やすことや高齢化を止めることは簡単にはできません。でも困っていることの解決はなんとかできるのでは。
困っていることの一つの例ですが、秋田県の豪雪地帯では高齢者が雪寄せの最中に屋根から落ちて亡くなる人が多いのです。雪の重みで家が壊れてしまうことも珍しいことではありませんから危険を承知で屋根に登ってしまう事になります。交通事故の死亡者より雪害で亡くなる人が多い年もありました。
多くの地域住民から雪下ろしの人がいなくて困っているという声が届きました。そこで、この課題を解決するために中間支援NPOが中心になり高齢者や障害者宅の雪下ろしや雪寄せ作業をする、地域の「共助組織」を立ち上げる事業を行いました。現在も継続していますが県内全域で38組織が立ち上がっています。
この「共助組織」の活動は雪寄せだけではなくそれぞれの地域課題の解消のため買い物支援や高齢者の見守り、シニアサロンの開設などにも広がっています。これまで、近隣住民や親戚などでごく自然な形で行われていた助け合いが少子化や高齢化が進むにつれて減少してしまいました。
農家に生れた私は子どもの頃、田植えや稲刈りなどの繁忙期になると近所のおじさんやおばさんが手伝いに来てくれて、ワイワイ、ガヤガヤと大きな声で話し、笑いながら農作業をしていた事を覚えています。農作業のほとんどが「人の手」に頼るしかなかった頃、地域がお互い助け合いながら1軒が終わると次の家の手伝いに行く、そんな時代でした。今では機械化が進み大きく整理された田んぼを機械で一気に、一人で田植えも稲刈りも終えることができます。干渉されすぎない生活が大事にされ、今は自分のことは自分で、周りを巻き込むことを良しとしない風潮ができてしまいました。人口減少が進むこれからは、行政を頼るのにも限界があります。
「共助組織」のような新たな地域コミュニティを作っていく必要があると思います。人口減少や高齢化問題は秋田県だけではなく日本全国で取り組むべき問題です。共助活動をけん引するリーダー役の人材育成や地域行事への若者の参加などはNPOの得意とする分野です。課題を的確に捉えながら自分たちの社会的役割をしっかりと果たしていきたいと考えています。