日産自動車は1998年から10年間、「日産NPOラーニング奨学金制度」というインターンシップ・プログラムを行っていた。NPOで仕事を経験したいと願う学生を公募し、活動の実績時間に応じて学生に奨学金を支給するという内容だ。同プログラムの特長はいくつかあるが、その一つが9か月という長期間のプログラムという点だ。

インターンシップは未来への投資

6月27日東京で開かれたイベントで、同プログラムの立ち上げから運営までを中心的に担った元日産自動車の島田京子さんに話を聞いた。島田さんは「インターンシップは未来への投資です。未来を志向する人々が、どのような社会に生きたいかを実験し、体験し、思索する機会を提供することがミッションでした」と話した。

「日産NPOラーニング奨学金制度」の運営にあたって重視していたのは「人材育成の視点」。プログラムは9か月間、 学生が 一つのNPO団体で、スタッフとしての仕事を通じてキャリアを積んでいく。

昨今、大学生がこぞって参加している企業のインターンシップは「一日プログラム」が最も多いそうだ。リクルートキャリアの「就職白書2019」によると、81.6%のプログラムが「一日」。同白書では、新卒採用を行う企業の95.9%がインターンシップを実施していて、その目的は「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」が最も高く88.2%だという。さらに、昨今増えているのは、「採用を意識し学生のスキルを見極める」「将来の顧客となりえる学生に対して、自社に対する理解・イメージアップを促進させる」「採用に直結したものとして実施」。「人材育成の視点」でインターンシップを行う「日産NPOラーニング奨学金制度」とは全く別物だ。

パートナーシップを組むNPOに望むこと

日産のインターンシップは「未来への投資」として位置付けていたからこそ、受け入れ側のNPOも学ぶ機会を提供する組織としての意識が求められた。「NPOには学生を育てるということを理解して受け入れてもらいました。だから、単なる労働力ではない。スタッフとして扱ってくださいとお願いしていました」。

「日産NPOラーニング奨学金制度」の根底には「専門性と知力と優れたマネジメント力をもつNPOとパートナーシップを組み、共に未来の社会を支える若者に投資する」ことがある。そのため、日産はインターンシップを受け入れるNPOに対してコーディネート費用を支払っていた。その分、NPO側に求めるものも大きかった。「日産がパートナーシップを組むNPOに望むこと」として、以下の項目がある。

①日産と共有できるミッションを持っている
②専門性に優れ、オジリナリティーがあり、高い質を持つ活動である
③優れたリーダーシップを持つ責任者が存在し、信頼性の高い組織である
④社会的影響力のある活動となる可能性がある
⑤会費、会社・個人からの寄付など財務のバランスがとれている
⑥情報発信力がある

NPOインターンで広い視野、多様な視点を持つ人材を育てる

では、そもそもなぜNPOと組んだのか。「社会的に先駆的なことをやっているのはNPOです。しかも、ただやっているのではなく、数名のNPOで多くのボランティアを抱えているところがあり、そのような組織では共感によるマネジメントが必要となります。こうしたNPOで学生がいろいろな体験をしていきます。こうして異なる世界や分野を体験し、多様な価値観に出会うことで、新しい学びや思索する力を得られます」。(島田さん)

この日、何度も話に出てきたのは「未来、社会への投資」という言葉。もう一つが「多様性」だった。広い視野、多様な視点を持つ人材を育てるには、今の大学生活、企業でのインターンシップだけでは難しいかもしれない。NPOと大学、企業が連携して学生を育てていくことが求められている。

このイベントを主催したのは「NPOインターンシップラボ」。地域と若者が双方によりよく成長できるコーディネーションを学ぶために行っている勉強会の第三弾として行った。 今後も、同テーマで議論を深めていく。

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