日本NPOセンターは損保ジャパン株式会社の支援を受け、SAVE JAPANプロジェクトを運営しています。このプロジェクトは地域の環境NPOと、NPO支援センター、損保ジャパンの支店が地域事情に合わせて市民参加型のプログラムを実施し、地域住民とともに「いきものが住みやすい環境づくり」を行うものです。ここ数年は環境省の施策や生物多様性に対する取り組みのトレンドに合わせ、「自然共生サイトの採択プロセスと採択後の広がりづくり」と「生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)」に関する取り組みを柱としています。 

「生物多様性保全」は企業の注目テーマ 

このプロジェクトは2011年から実施していますが、時代に合った興味深い取り組みになっていると感じています。
2022年にカナダのモントリオールで開かれた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。この枠組みでは「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」ことが2030年までのミッションとされています。これを受けた取り組みとして日本政府は「生物多様性国家戦略20232030」を策定。その中の基本戦略の1つとして「ネイチャーポジティブ経済の実現」を位置付け、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を策定しました。
また、2021年にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が設立され、生物多様性関連の非財務情報を「自然関連財務情報」として開示することを企業に求めています。
こうした国際的な潮流を受け、企業の間で生物多様性保全への取り組みがにわかに注目を浴びるようになりました。 

地域性と多様な主体の連携 

生物多様性保全に関する取り組みは、定量的な評価が難しく、またモデル化した展開が向かないように感じます。(もちろん専門的な評価手法は存在し、共有されているノウハウはあります)
例えば、日本においては里地里山が重要な役割を果たしていますが、そもそも里地里山は人の手が入った環境です。その里山がライフスタイルの変化によって放置された結果、変化した環境があったとして、どういう状態に戻すのがよいのかは難しい問題です。気候や土地利用、文化など地域によって事情が異なりますし、特定の地域で希少生物とされている生物種が、別の地域では生息しているということもあります。また、生物多様性は様々な変数によって成り立ちますので、特定の活動がどの範囲でどのように貢献したのかを測ることは簡単ではありません。
こうした背景から、生物多様性保全の取り組みはその地域事情に合った取り組みを作る必要があり、人口減やライフスタイルの変化など地域の持続可能性の問題と切り離せないと考えています。住民をはじめ地域の関係者が「どういう地域で暮らしたいのか」というイメージを共有する必要もあり、多様な主体の連携が重要となります。 

SAVE JAPANプロジェクトの特徴 

SAVE JAPANプロジェクトは、「生物多様性の保全」を全国共通のテーマとしていますが、実際の活動は地元のNPOが中心となり、地権者や自治体はじめ地域内のステークホルダー、損保ジャパンの支店などが協創しています。NPO支援センターがコーディネートし、地域ごとに行われていることは実に多彩です。テーマは共有しながらも、全国一律で同じ活動をするのではなく、地域事情に合わせて展開する手法はNPOと協働して行う企業のサスティナビリティ活動の1つのモデルとなると考えています。
SAVE JAPANプロジェクトは毎年10月~9月に取り組みを行っており、2025-2026シーズンの開催地も決定しました。今年度からは国立環境研究所の西廣淳先生をアドバイザーに迎え、環境省の後援を得て、より専門的な見地からの設計も行える体制となりました。
各地で行われる体験活動は順次特設サイトに掲載しますので、ぜひお近くの活動にご参加ください。 

SAVE JAPANプロジェクト
https://savejapan-pj.net/