昨年の秋から、下のような図を用いて講演することが多くなった。分かり易いのか、反応は概ねよい。図柄やコメントは講演の趣旨によって少しずつ変えており、固定させるにはもっと洗練させてから、との思いもある。だからWebや紙媒体での公開は控えてきた。しかし洗練の見通しもたたないので、まず今の段階でWeb上に公開することにした。
図中の楕円は、船を示している。ちょっと分かりにくいが、NPOの組織基盤の表現だ。御盆でもいいが、喩話しとしての発展性を考え、船にみたてた。もっと船らしい図柄も試みたが、複雑になるのでこれで止めた。△や〇や□は、さまざまな積荷。すなわち、個々のプロジェクトで、自主事業もあれば委託事業もある。この図で言いたいことは、図中のコメントの通りだ。「組織基盤(船)が弱いまま個々のプロジェクト(積荷)ばかりが一見豪華になっていないか」ということである。
積荷は見えやすい。報道にも馴染やすく、記事にもなればニュースにもなる。お金もつきやすい。しかし船はそうはいかない。船をしっかりさせるには、自らの自覚的な弛まぬ努力が必要だ。だが、その余裕がない。だから脆弱なまま。あるいはせっかく立派に建造しても、いつの間にか傷みがひどくなる。メインテナンスができない。このような船を、失礼ながら私は「ドロ船」と呼ぶ。立派な積荷を一杯に運んでいても、いつ沈むか分からない。右往左往して、行方さえわからない船もある。日本のNPOの多くは、そんなドロ船ではないのか。そのようなドロ船が、日本近海で増え続けてはいないか。
もちろん積荷は重要だ。その運搬にこそ、社会的使命の実現もある。それがなければ運送料ももらえない。最低限の船の補修や維持もできなくなる。しかし積荷にばかり目が行くと、やがて積荷そのものを運べなくなる。積荷の重さに、船は耐えられなくなって沈没する。
これからのNPO施策やマネジメントの課題は、このドロ船(あるいはそれは筏船かもしれないが)に気づき、これをどう立派な船にしていくかにある。「新しい公共」支援事業は、まさにそのためにあるはずだ。そこで日本各地で基盤強化のプロジェクトが始まっている。そのこと自身は重要だ。しかしそのはずが、いつの間にか豪華な積荷づくりに力が注がれてはいないか。本当に船は強化されるのか。
まずは個々のNPOが自らのドロ船に気づくところから、市民セクターの強化が始まる。そのためにも、私たちのセンターをはじめ、各地の支援センターの役割は大きい。責任も重い。まずは、このドロ船論議を、全国各地で活発に行ってほしい。