NPO法施行から20年近く過ぎ、中核スタッフが世代交代をする時期を迎えつつあります。後継者の人材育成、事業継承に事業評価を役立てることも可能です。

今の評価は、これまでの実績をどう測り示すかという静的なイメージがあります。頑張ったがベストとは言えないし、途中で変わった部分もあると感じていると、満点はつけがたいが否定もしたくない、というモヤモヤした感覚になり、厳密に評価をするのはできれば遊けたい、そして次の話をしたいという感覚が生まれやすいと思います。

これから事業を作る、という部分にスポットを当てると評価のイメージが変わる気がします。これから、状況が変化する中でどんな事業を選ぶか、それはミッション達成、課題解決、財政的貢献にどうつながるか、それを考え悩んでいる人はたくさんいます。自発的にNPOの世界に入った人は皆「あなたは何をする人ですかJという向いに直面するはずです。

NPOを作った第一世代の人は、他の組織の動きや制度の動向も見つつ、これがニーズだと思った直感や、これをしたいという、言語化しにくい感覚を源にして事業を立ち上け、どのように振る舞えば前に進めるか、自らの経験を頼りに舵取りしてきたところが多いと思います。第二世代がこの感覚を持つのは難しく、言われたことや、やったことはこなせても、ゼロから自分で事業を作りだしたり、リスクを負ってでも何かにチャレンジすることについては不安をもつ傾向があるように感じます。そんな世代に、「自分を信じろ」とか、「俺の背中を見てきただろ」と言っても簡単には動けないでしょう。

次世代リーダーに育って欲しいスタッフが、これから組織の柱になる事業を作り出すために、ミッションと経営環境の再確認をした上で、事業の目的や目標をしっかり立て、その達成に必要な事業計画とその進捗管理ができる仕組みを作ること、いわゆるマネジメントですが、そのサイクルを回す時に、代表と違う立場で伴走する人がいるといいと思います。そしてその伴走者と事業リーダーがキャッチボールをする中で、評価というツールが効いてくるのではないでしょうか。

いうなればオリンピックをめざすアスリートとコーチとの関係性です。事業の目標達成と金メダルはやや違うかもしれませんが、ゴールに向かって何をすべきか考え、スケジュールを立て地道にすべきことをして、結果はどうあれ、そのプロセスで自らが成長する、という営みはNPOの事業と重なるように思います。「NPOは人間を変革させる装置」という有名なドラッカーの言葉もありますね。

「最近、どう?」「とりあえず何とかやってます」という会話がよくありますね。でもこれだと育ち合う関係にはなりません。お互い大変そうだけどやるしかないか、とりあえず飲みに行くか…みたいな関係は少しほっとしますが、日常的な不安の解消にはなりませんし、変化や成長につながらないので、周りから見ても共感を得にくいでしょう。

「どれくらい目標達成できた?」「先日教わったやり方を取り入れたらこの部分はここまでの実績がでました」「今度はここをクリアしたいんですが、あなたはどうやってきたんですか?」「自分の時はこうしたらこうなったよ」みたいな会話がアスリートの会話ではないかと想像しているのですが…、そんなやり取りが伴走者との間で交わされるような関係性ができたら人が伸びると思います。

また、20年やってきた人のチャレンジ精神や自らがこう動けば人はこう返してくれるというようなノウハウを、職人芸ではなく、言葉、メソッド、できれば理論に近づけていき、マインドを継承しないのはもったいないとも思います。若い世代に伝えたいと思っている人も、学ぴたいと思っている人もきっといると思います。

目標を設定して達成度を測りながら自信と経験を積んでいくことが成長につながります。事業評価は伴走者との対話、自分自身との対話のツールとしても生かせるはずです。
(「知っておきたいNPOのこと 5 事業評価編」より転載)