まちで、NPOが活躍する場面をよくみるようになった。
あるNPOでは、究極的にフラットな組織を目指そう、というコンセプトのもと、メンバー全員がボランティアで、しかも企業で働きながらNPOの運営を担っている。責任をひとりに押し付けないことをモットーに活動をしているが、その業務負担の大きさはボランティアの範囲を超えているように見える。

では、そのような組織の場合、メンバーは何がインセンティブ(報酬)となって関わっているのだろうか。それは、まちを活性化していきたいという思いだったり、そのまちでビジネスを行う者同士のネットワークを得られることであったり、はたまま、単純にそこでの出会いが楽しいからかもしれない。さらに、職場とは違い、「評価から解放される場」となっていることも大きな要因かもしれない。そして、住んでいる地域で楽しみがあることで、仕事とのメリハリがついて、相互作用が得られることも、原動力となっているのだろう。

藤沢市では、ある講座の受講者から「定年退職後の男性の居場所がない」というご相談を受けた。数十年間企業で必死に働いてきたが、家庭のことは妻任せ、地域のことも人任せで、地域において、挨拶できる関係はあるものの、一緒にお酒を飲んだり気楽におしゃべりをしたりできる人がいないのだという。日中、地域の公園にいても、子連れのお母さんなどから奇異な目で見られてしまい、どこへ行ったらいいのやら、ということだった。

そこで、「プラザdeカフェ 会社人から社会人へ」(藤沢市市民活動プラザむつあい(認定NPO法人藤沢市民活動推進機構運営)の企画による)と題した場を設けたところ、これがハマり、今ではそこに参加したメンバー7名でグループをつくり、学びや交流の場とともに、地域活動、市民活動に励んでいる。日頃から地域の中で息の合う仲間がいることの大切さを痛感する機会となった。 

何事も楽しくなければ続かない。逆に、楽しいからこそ、ちょっと大変でも続けていくことができる。そんな風に考え、行動できる人がひとりでも増えることで、そのまちの魅力は高まっていくような気がしている。まちに関わるひとの受け皿という意味では、NPOが果たす役割や価値がもっと注目されてもいいのではないだろうか。