<取材・執筆>鈴木 良壽 <取材先> ジャパンユースプラットフォーム 高橋 理都子さん
「ミツバチが地球上から消えたら、人類はあと4年生きられるだろうか?」
――アルベルト・アインシュタイン
初めてこの一言を知った私は、衝撃を受けた。現在、減少の一途を辿るミツバチ。環境活動家・谷口たかひささんの講演で聞いた話だ。私は居ても立ってもいられなくなった。
そういえば、4月22日の地球の日(アースデー)でも、Googleの検索ページのトップで、環境問題解決の象徴のようにGoogleのロゴの上をミツバチが飛んでいた。
私は中学校の教員をしている。中学生と毎日生活を共にし、未来を語り合う私にとって、ミツバチの運命が、人類の運命を大きく変えるという事実は、他人事には思えなかった。現在、地球の温暖化の影響で、世界中のさまざまな景色が変わってしまっている。かつて描けた未来も、このままでは描けなくなってしまう。
「気候変動」を早急に解決するため、自分にできることをがむしゃらにやろうと、さまざまな市民活動に参加した。その活動中に、「気候若者会議」の存在を知ることになる。がむしゃらさだけで、気候変動対策について議論ができるか不安でもあったが、参加してみることにした。
日本版?気候若者会議?
私が参加したのは、「日本版気候若者会議」である。日本版というからには、モデルになる国がある。それはフランスだ。フランスでは、「黄色いベスト運動」を受けて、マクロン大統領が主導して「気候市民会議」を開催した。この市民会議の大きな特徴は、くじ引きで無作為に選ばれた150人が、政策提言のために集まって議論したという点である。無作為抽出された人々が、さまざまな意見を交わすことで、市民の当事者性が高まる。政治家頼みにならない社会づくりをするムーブメントは世界中に広がっていて、その一例ともいえる。
今回の日本版気候若者会議は無作為抽出ではないが、知識や経験を問わず公募され、100人の市民がオンラインで気候変動政策について議論した。参加者は、北は北海道から南は沖縄までの地域から、職業や所属も幅広い層が集まった。「若者会議」なので、年齢は高校生から30代後半まで。毎週日曜日に3時間、10週にわたり議論が重ねられた。
本記事を書くにあたって、あらためて本会議の事務局高橋理都子さんに話を聞いた。事務局でも、「直接顔を合わせないオンラインだけの場で、議論がどのように進むのか、そもそも議論自体しっかりとできるのか」など、多くの不安があったようだ。だからこそ、「参加者が安心だと思える場所をつくりたい」「ポジティブに楽しめる空間をつくりたい」という気持ちをもって臨まれていたとのことだ。がむしゃらさだけが取り柄の私には、本当にありがたい配慮のある場だったのだと思う。
議事録を取り忘れるほどに白熱する議論?!
実際に、10週間に及ぶオンライン会議はどうだったのか。
この会議では、いくつかのグループに分かれて議論を進めた。私は「消費」のグループに分けられ、誰もが関わる「消費」にまつわる事象について提言をまとめた。
「消費」にまつわる事象といって、何を思い浮かべるだろうか。まず、真っ先に出てきたのは、プラスチック商品についてだ。プラスチックの製造過程から、使用、そして廃棄まで丁寧に事実を確認し、どうすればプラスチックを減らせるか、ゆくゆくはなくすことができるか議論をした。ただ、プラスチックを悪者にしてしまっては、あまりにも極端な意見にならないか。プラスチックにも良さがあるから、いまこれだけ普及しているのではないか。社会的に偏りのない実現可能な提言になるよう、議論を重ねた。ある時、白熱した議論が展開され、議事録を作成する係が議事録のことをすっかり忘れていたという。毎回の議論は、時間が足りないほど盛り上がった。
そうやって提言ができた。詳しくは、日本版気候若者会議のホームページに載っている提言文を参照していただきたい。
日本版気候若者会議 提言内容
https://youthclimateconference.jp/archives/351
開催中も、事務局の方々の間では、「オンラインで参加者全体の様子が分からないこともあり、みんなが充実した時間を過ごせているか心配」という不安や、「この参加者ともっと話してみたい、会いたいと思うこともあったが、できない」というもどかしさがあったという。
しかし、冒頭でも書いたように、時間を忘れ、記録を取り忘れ、時には笑いも交えながら議論は進んでいった。私も最初の不安は消え、毎回参加者の方から気候変動に立ち向かうためのエネルギーをもらっているようにさえ感じた。
日本版気候若者会議の終わりは、初めの一歩だった!
がむしゃらさを売りに走り切った10週間。先に述べたフランスの市民会議の話も会期中に学んだことであり、民主主義の刷新のムーブメントなど新しく知ることはたくさんあった。
しかし、会議が終わってからも気候変動について話し合える関係を築けたことが、何よりの財産だ。市民活動とは、単純に楽しいし、ある種パワースポットのようだ。気候変動にアクションを起こすためのエンパワーメントな場が、日本版気候若者会議であったと感じている。さまざまな工夫をし、参加者が繋がり続けられる場を提供してくださった主催者の方々に本当に感謝している。
本会議の終わりは、気候変動対策に若者の声を届ける初めの一歩につながった。主催者により、作成した提言は政府関係者に手渡され、またNHKやBSのテレビ番組で報道されるなど、さまざまな手段で拡散されている。
「若者の意見 政策に反映を」気候変動で100人以上の若者が提言
地球クライシス2021~気候変動 壊れゆく世界~第2弾
私の周りの参加者も、さまざまな活動をしながら気候変動に対してアクションを起こし始めている。私も新たにチャレンジをしようと本記事を書いている。
日本版気候若者会議は、来年も3,4月ごろを目途に、再び実施される予定である。来年は、さらにパワーアップした日本版気候若者会議となるよう私自身も準備したいと思う。
一人一人の力は微力でも、無力ではない。このような市民活動が、気候変動の問題を少しでも好転させるものであると信じている。次回の気候若者会議への参加、それ以外の気候変動対策に関する活動への参加のきっかけに本記事がなることを祈っている。