<取材・執筆>深見 明日香 <イベント>「国際協力カレッジ2023」独立行政法人国際協力機構 中部センター(JICA中部)特定非営利活動法人名古屋NGOセンター

現場の声から学びときっかけを得る場

「国際協力カレッジ」は国際的な課題に関心を持つ人びとが、現場の声に触れ、考え、動き始める「学び」と「きっかけ」の場である。名古屋NGOセンターJICA中部との協働により2006年にスタートし、今年で18回目の開催となった。筆者自身も関心があり、住んでいる中部地域で海外の人のために活動する人に会ってみたいという思いで参加を決めた。

3年ぶりに対面での開催となった今回は、参加者66名と、NGO等10団体の出展があり、総勢およそ100名と盛況だった。半日のプログラムが組まれており、意見交換をする時間も多く、受け身の受講というよりは参加型のカリキュラムとなっている。参加者は小学生から社会人、定年後の方まで幅広く、様々な年齢層の方から国際協力への関心を聞くのは刺激になった。

開会の言葉を聞く参加者

プログラム構成としては、「1時間目」は国際協力の場で働いている3人の方が、活動を始めたきっかけ、やりがいや苦労する点について話してくれた。「2時間目」は中部地域のNGOによるアピールタイム。参加者が活動に興味を持ち参加したくなるような説明だった。「3時間目」は、2時間目の説明で興味を持った団体に詳しく話を聞くマッチング展、「4時間目」は1日の振り返りという流れだった。

1日の終わりには、国際協力がより身近なものになっていた。その様子を追体験いただけるように、1時間目から4時間目までをレポートしていきたい。

国際協力の現場で働いている方のお話 イカオ・アコ 二角智美さん

NGOやJICA海外協力隊で国際協力を仕事にしている3名の方から、お話を聞いた。登壇されたのは特定非営利活動法人イカオ・アコの二角智美(ふたかど・ともみ)さん、認定特定非営利活動法人アイキャンの福田浩之(ふくた・ひろゆき)さん、JICA中部の伊藤知世(いとう・ともよ)さん。その中でもイカオ・アコは初めて知った団体だったため、二角さんの来歴とイカオ・アコの活動を詳しく説明したい。

二角さんは、幼少期からご両親の勧めでボランティア活動に参加。ユニセフの街頭募金やアフリカに日本で集めた毛布を送る活動をしており、国際協力への参加が身近な環境で育った。高校2年生の時にタイ・ラオスのスタディツアーに参加。そして大学3年生の時、交換留学で半年間フィリピンに行った。はじめは途上国の人たちの生活に衝撃もあったが、文房具を寄付する活動で訪れた小学校の生徒たちの嬉しそうな目の輝きが忘れられず、その心の瑞々しさに感銘を受けた。この経験から、いつか海外でボランティアをしたいという思いを強くした。

大学4年生の時に、名古屋NGOセンターが主催するイベントでイカオ・アコと出会い活動に参加。フィリピンの人たちとの交流を通して活動に熱中していき、卒業後はイカオ・アコで働き始めた。しかし、フィリピン人スタッフの現地での活動をサポートするため、事務仕事をしようにも、メールや書類の書き方がわからない。活動に役立つ能力を身に付けるためには社会人経験が必須だと痛感した。そこで、マニラで日系の不動産会社に就職し、社会人としての基礎を磨くことにした。

初めての社会人経験で難しさもあった。フィリピン人スタッフに日本の会社特有の細かいルールを伝える中で衝突が生じ、そのスタッフが次の日から仕事に来なくなったことがあった。このことは、「相手目線に立って話を聞いていなかったかも」と反省する出来事となった。現在のイカオ・アコでの活動の中でも気を付けるポイントとして心に留めている。この仕事に就いていた間もイカオ・アコとの繋がりは続いており、休みを使ってマングローブの植樹活動に参加していた。不動産の仕事は3年で区切りをつけ、そのあとは再びイカオ・アコで働くことになり、現在に至る。

イカオ・アコはフィリピンのネグロス島・ボホール島で、マングローブの植樹活動をメインに、雨水タンクでの安全な水の供給、台風災害時の食糧支援など幅広く活動している。マングローブの植樹活動には3つの大きな効果がある。1つ目は、島の防波堤の役割だ。マングローブは島の沿岸に高波が直接打ち寄せるのを防ぎ、台風の影響を抑えることができる。2つ目は、生態系を再生し島の漁業に貢献できること。3つ目は、マングローブの苗を現地調達しているため、島の人の所得増に繋がることだ。島での植樹活動はフィリピン人スタッフが主導で行っており、二角さんの活動は植樹活動のスケジュール管理、広報活動、フェアトレード商品の販売などだ。現在、日本事務所は二角さんを含めた3人体制で運営しており、一緒に植林ツアーの中身などを企画できるスタッフを募集しているという。

イカオ・アコ 二角さんと、委託販売中のフィリピンのジュースパックで作られた鞄

中部地域のNGOによるアピールタイムと、マッチング展

2時間目は出展した10団体によるアピールタイムだった。1団体3分の持ち時間で団体の活動・魅力をアピールし、3時間目のマッチングの時間により多くの参加者に話を聞いてもらえるようにする。3団体程のアピールを聞いた後で、参加者は3人1グループになって、気になった団体とその理由を話す。自分の視点では気付けなかった面白さに気付くことができ、3時間目のマッチング展で話を聞く際の参考になった。

笑顔で団体アピールをするイカオ・アコ 木村さん・二角さん(左から)

3時間目のマッチング展では、参加者がより話を聞きたいと感じた団体のブースに行き、1セッション10分程でより詳しい話を聞く。このセッションは3回行われるので複数団体を巡ることができる。団体のホームページや直近のイベント情報なども教えてもらえるので、イベント当日に団体への参加を決めきれなくても今後の検討に活かせる。

熱心に出展団体の話を聞く各ブースの参加者

振り返り

振り返りでは、参加者も出展者も参加し1グループ5名ほどのグループを作って話し合った。定年後のやりがいを求めて参加したという方はイカオ・アコのマングローブ植樹活動に興味を持っており、ぜひフィリピンに行ってネグロス島・ボホール島の人たちと一緒に活動したいという。また、保健所で働いているという方は「アジア保健研修所」の活動に興味を持っており、「日頃の仕事ではカバーできない部分に取り組んでみたいと思った。国際協力は遠い存在ではない。日頃の課題意識の延長にあるものだと感じた」と話してくれた。中米グアテマラの子どもの教育支援をしている「幸縁(しえん)」の出展者の方からは、「NPOの活動と学校教員との二足の草鞋で時間のやりくりが大変な時もあったが、参加者の皆さんが目をきらきらさせて話を聞いてくれて、これからも頑張ろうと思った」とのこと。自分の力・時間を国際協力に使いたいという思いが参加者にも出展者にも共通してあり、情報だけでなく熱いエネルギーも交換できた充実感が会場全体に満ちていた。

イベントに参加する前は、国際協力というと現地に赴き長期間活動するイメージがありハードルが高かった。しかし話を聞くうちに、現地の活動の事務的な支援やオンラインでの英語教育の支援など、日本に暮らしながらでも活動に参加できることが多くあると知ることができた。イベントの参加者は学生、社会人、定年後の方まで幅広く、それぞれ国際協力に使える時間は異なるメンバーだった。「日中は別の仕事をしていてそれ以外の時間を活動に充てたいと思い参加した」と話してくれた参加者もいた。自分の時間を活動に充てたいという気持ちがあれば、参加の仕方は様々な選択肢があることに気付けた。それぞれが持てる時間の中で国際協力の活動をしていくことができれば、それが集まって大きな力になると実感したイベントだった。

■イカオ・アコの活動に興味を持った方はこちらをご参照ください。一緒に活動を企画できる方を募集されています。:特定非営利活動法人 イカオ・アコ | 環境NGO (ikawako.com)

■国際協力カレッジ2023の出展団体に興味を持った方はこちらをご参照ください:【終了】無料 12/9(土)「国際協力カレッジ2023」参加者募集! – 特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター (nangoc.org)

1件のコメント

  1. 臨場感あふれる丁寧な報告、ありがとうございます。当日、私も初めての参加でした。名古屋NGOセンター理事の中島正人です。

    中島正人

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