<取材・執筆>千綿 海大 <取材先>NPO法人ポピンズくまもと 地域食堂「ぽぴカフェ」 代表 森髙 麻里さん
地域食堂「ぽぴカフェ」(代表:森髙麻里さん)は、NPO法人ポピンズくまもとが運営する、熊本市西区にある地域食堂である。ぽぴカフェは約3年前から、地域の方々や企業の協力を得ながら運営されており、ボランティアも多数参加している。子どもたちが健やかに成長し、将来に向けて元気に学べるよう、支援を行っている。また地域の人の居場所づくりや、地域のコミュニティ形成にも貢献している。
2023年4月17日16時頃に、ぽぴカフェを訪れた。着いたときには、すでに小学生が数人集まっていた。食堂で提供しているお弁当ができるまで少々時間がかかるため、「ぽぴべん!」も開かれていた。計算ドリルを1ページ解くことができたら、お菓子とバナナがもらえるためか、子どもたちは一所懸命に取り組んでいた。私は計算ドリルを解くお手伝いをしていたのだが、30分ほど経つと、すぐ近くの公園で遊んでいた大勢の子どもたちが、ぽぴカフェにやって来て、口々に「麻里さん、こんにちは!」と心地よい挨拶をする。彼らもご褒美をもらうためか、計算ドリルを熱心に解いていた。お弁当ができあがる頃になると、年配の方ももらいに来られていた。その日のお弁当は、地域の方から頂いた玉ねぎを使用した生姜焼き弁当であった。
ぽぴカフェの駐車場では子どもたちが、ワイワイとしゃべりながら、お弁当を美味しそうに食べていた。私もそのお弁当を頂いたのだが、とても美味しかった。お弁当を食べ終わる頃には、18時前になっており、子どもたちが帰宅し始めた。その中には、お兄ちゃんの分のお弁当を持って帰る子どももいた。
私が実際にぽぴカフェに伺って印象的だったのは、森髙さんと子どもたちの触れ合いであった。一言で表すなら、「挨拶と会話が絶えない」である。子どもたちの元気の良い挨拶は本当に快いし、また彼らが森髙さんを信頼しているということが肌で感じられた。今日学校で何があったのかを楽しそうにしゃべっている子どもたちと、その話をじっくり聞く森髙さん。その様子は、写真に収めたくなるような素晴らしい光景であった。
――まずは地域食堂ぽぴカフェの概要について伺えたらと思います。ぽぴカフェはポピンズくまもとの中で、どういう位置づけで活動されていますか?
ぽぴカフェは、児童と家庭、そしてその支援者の支援をしているポピンズくまもとの事業の一つになります。今年で3年目になります。
――3年前にぽぴカフェを始めたということは、ちょうどコロナ禍ですよね?
はい。外に出てはいけないような呼びかけがあったときにみんなが困っていて、特にひとり親家庭にとっては、生活がより厳しくなる。そこで、そういった方にお弁当を届けようという目的から、ぽぴカフェはスタートしました。でも実際のところ、お弁当を届けることよりもむしろ、お弁当を配布して、コミュニケーションを取ることがより大切なことだと気づきました。
――コロナ禍で、他者との触れ合いが明らかに減りましたからね。
そうですね。今困っている人の、困っていることって、実際に関わることでの反応でしか気づけない部分が多い。地域の中には、今困っていることを区役所に相談するとかではなく、誰でもいいから聞いてほしいっていう人たちが溢れている。単に食べ物を届けるだけでなく、そういった心のサポートも必要だと感じています。
――食材の調達などはどうしているのですか?
ご近所さんや農家の方、子ども食堂のハブ機関はもちろん、ここで食堂を開いているときにたまたま通りかかられて、食材を寄付してくれる方や、市役所のホームページを通じて食材を寄付してくださる方もいらっしゃいます。
――なるほど、食材提供は大変助かりますね。次は運営していく上で、今後の展望や課題があれば教えてください。
今日はスタッフがたくさんいる日でしたが、普段は2、3人です。お弁当を作るだけで精一杯です。そういった人的な課題もありますが、資金面での課題もあります。助成金のおかげで、ぽぴカフェは運営できています。助成金がもらえないからといって、ぽぴカフェを閉めることはできません。だから助成などの支援をいただけるよう、必死でそうしたことも全部ひっくるめて、運営の仕事を行う必要が常にあります。地域のことを必死にやっていますので、もう少し行政などからの資金的援助があると助かるのですが。
――そうですね、地域のことをやっていらっしゃるので、もう少し行政などからの援助があるといいですね。
行政のレベルでは見えない問題はいっぱいあります。例えば、行政の相談所に行って相談するレベルではないものの、日々の子育ての中に悩み事はたくさんあります。子どもたちもそうです。わざわざ学校のカウンセラーに相談するほどではなくても、ちょっとした悩みや疑問を抱えています。そんな子どもたちは、抱えたモヤモヤを、「麻里さん、ちょっと聞いて」と言って私に話してきます。それをみんなで聞きながら、「それってこういうことじゃない?」とか、「そういうつもりで言ってないと思うよ」とか言いながら、小さなイライラやモヤモヤを解決していくことは、すごく大事なことだと思います。
――保護者にとっても子どもたちにとっても、そういった場所だと訪れるのにハードルが低くなりますね。最後の質問ですが、子どもたちをはじめ、食堂を利用する人たちに向けて何かメッセージはありますか?
あえて地域食堂と言うようにしています。お弁当をもらっていない子に、「どうしてお弁当もらわないの?」と聞いたら、「子ども食堂だから困っている子が食べるんでしょ」って答えます。ここは地域食堂だから誰でも来ていいんだよ。お金持っている人も来るよ。だからお弁当をもらっていいよって、強く言いたいです。そうでないと、みんなのニーズが拾えないというか、本当に助けたい子を助けられない。だから、お金や食べ物で困っている人がうちに来るのではなく、ここを居場所として、楽しかったこと、嫌だったことをみんなで話す場として来てほしいです。
――確かに子ども食堂と言われると、困窮している子を助けるための場所に思えます。もちろんそれ自体は大事なことですが、かえって利用しにくくなる人もいるかもしれませんね。
だからみんな来られるようにしておく。みんな来て、その中で手を差し伸べる。それも、経済的に必要かどうかは問題ではないと思います。人と触れ合うことや、孤食を防ぐことができる場であるために、あえて子ども食堂と言わないようにしています。
――一つの遊び場、一つのコミュニティとして立ち寄ってほしいです。
それぐらいがいいですよね。それこそ、今日良かったことを子どもたちは楽しそうに私に言ってきます。聞かせて聞かせてって言うと、「お友達が自分よりも先に挨拶をしてくれたから、とても嬉しかった」といった話をしてくれたりします。ありふれたことだと思いますが、表現することで、「私、あれが嬉しかった」と気づく。だったら私も友達に同じことをしようってなるじゃないですか。小さなところに幸せはあります。そういった会話をして楽しく帰ってもらえる、すごく良い空間になってきたと思います。
――ここにいると、自分もそんな気分になりました。機会があれば、是非食堂のお手伝いをさせてください。本日はありがとうございました。
苫小牧在住者です。
出来るだけ早く、ぽぴかふぇのような活動を見つけて参加したいと思います。
遠いところからですが応援してます😊
このような場所が子ども達の居場所になってくれればいいですね。地域食堂のような場所に救われている子どもがたくさんいます。早急に行政が動かないなら、せめて地域で守っていきたいですね、未来の希望達を。