<取材・執筆>北原 杏菜 <取材先>日本に逃れてきた難民を支援するチャリティラン&ウォーク「DAN DAN RUN」実行委員会 発起人 野村 国康さん、実行委員 星 有希さん
2025年5月25日(日)、東京都江東区の豊洲ぐるり公園で、チャリティラン&ウォークイベント「DAN DAN RUN」が開催された。
このイベントは、日本に逃れてきた難民を支援するためのチャリティ大会で、今回は記念すべき第10回。200人以上の参加者と、約70人の当日ボランティアが集まった。 朝方まで小雨が降っていたが、開会式が行われた午前9時15分には雨も上がり、澄んだ青空の下でスタート。参加者は、ラン(1.6km/3.2km/5km/10km)またはウォーク(3km/5km)から好きなコースを選べる。オンラインでも参加できる仕組みで、大会参加費やイベントグッズの売上は、認定特定非営利活動法人難民支援協会を通じて支援金として寄付される。
イベント名「DAN DAN RUN」は、公式サイトによると「人権侵害や紛争から日本に逃れて来た難民の方々に《暖かい冬を届けよう》という想い」を込めて名づけられたもの。その名のとおり、当日は実行委員や支援団体の関係者、参加者、ボランティア全員があたたかい気持ちを共有しながら過ごす一日となった。
気軽に参加しやすい“走る”“歩く”というアクションを通じて、支援を「自分ごと」として感じられるこのイベントについて、発足に関わった難民支援協会理事の野村国康さんと、第10回大会実行委員の星有希さんに、これまでの歩みと今後の展望についてお話を伺った。
「走ること」がつなぐ、支援と共感の輪
~発起人・野村さんが語る「DAN DAN RUN」誕生の背景~

「DAN DAN RUN」は2013年頃に難民支援協会のボランティアによるファンドレイジング活動として誕生した。その立ち上げに関わったのが、当時同協会の難民スペシャルサポーターとして活動を行っていた野村さんだった。
「当時、道端での募金やイベントで資金を集める活動があり、その中で“スポーツイベントをやってみない?”という話が出て。最初は本当に手探りでした。試してみて、ダメならやめればいいくらいの気持ちで始めました(笑)」
初回は大雪で中止になるなど波乱のスタートだったが、その後2014年6月1日に第1回大会を開催し、少しずつ形を整え、仲間とともに継続してきた。
「走る習慣がある人もない人もいる。ウォーク部門をつくるなど、誰でも参加しやすいイベントを目指しました」
今では、賛同者も増え、イベントの輪も大きく広がっている。
全員がボランティアという難しさ、そして希望
~第10回大会実行委員・星さんが語る舞台裏~

星さんは大学時代に難民支援協会で広報インターンを経験し、第1回大会には参加者として、そして今回の第10回大会では実行委員として初めて参加した。
「10回目という節目でしたが、今回は私のように、実行委員初挑戦という方も多くて。“これ、どうやってやるの?”というところからのスタートでした(笑)」
広報や展示、イベント内トークショーの司会、コンテンツづくりまで、あらゆる役割をこなしながら、仲間とともに大会を作り上げた。
「一緒に関わったボランティアの皆さんが、それぞれ課題意識やスキルを持っていて、本当に刺激的でした。そして200人以上の参加者が来てくれた。ボランティア主体のイベントで、ここまで多くの人を巻き込めることに希望を感じました」
参加者からは「支援の気持ちで来た」という声も多く、星さん自身もその言葉や思いに励まされたという。
小さなきっかけでもまずは「知る」ことから

難民支援というと、少し身構えてしまう人も多いかもしれない。しかし、野村さんも星さんも、「まずは知ること・関心を持つこと」の大切さを強調する。
「現代の日本には難民問題以外にも様々な社会問題があって、まずは国内の困窮者への支援をすべきという考えを持っている人もいる。でも、老人でも若者でも、外国人でも日本人でも、困っている人がいるときに、 “なぜ困っているのか”を理解しようとする姿勢を持ちたいと思います」(野村さん)
「チャリティTシャツなどのイベントグッズが可愛かったからでも、友達に誘われたからでもいいんです。“楽しそう”とか“面白そう”と思ったら、まずは参加してみてほしい。結果的にそれが支援につながるから」(星さん)
走って、語って、笑って、支援になる
~「DAN DAN RUN」のこれから~
イベントは今回で10回目を迎えたが、これからの課題は「参加者をもっと広げていくこと」だという。
「毎年参加してくださる方もいる一方で、新しい層にどう届けるか。オンラインなども含め、まだまだ可能性はあると思っています」(星さん)
「何より大事なのは、“楽しいイベント”であること。楽しさがあってこそ続く。走って、語って、笑って、それが支援になる。そんな空気を、これからも大切にしたいですね」(野村さん)
あなたの「ちょっと面白そう」が、誰かの助けになる


取材者自身も当日ボランティアとしてイベントに参加した。「寄付」といった直接的な支援だけではなく、トークショーや展示などを通じて、難民支援の多様なかたちに触れることができた。参加者と実行委員の垣根を越えて、「みんなで難民問題について考えよう」という思いが会場全体にあふれていた。
「DAN DAN RUN」は、走ることが目的ではなく、「寄り添う気持ちを持ち寄る場所」なのかもしれない。
少しでも心が動いたあなたへ。次は、あなたがその空気を感じてみてはどうだろうか。 その「ちょっと面白そう」という気持ちが、社会に優しさを広げていく第一歩になるかもしれない。
<関係記事> DAN DAN RUN実行委員による開催報告ページはこちら↓
【開催レポート】チャリティーラン&ウォーク DAN DAN RUN 2025