内閣府が4月16日にある調査結果を公表しました。タイトルは「いわゆる「休眠状態」にあるNPO法人の実態調査結果について」。休眠状態にある特定非営利活動法人(以下、NPO法人)の数と、所轄庁の対応状況をまとめた初の調査です。この調査では「事業報告書等を提出していない法人」と、「事業報告書等を提出しているものの、活動実態が不明確な法人」を「休眠状態」にあるNPO法人としています。
これによると8,064法人(約15.6%)に事業報告書の提出漏れがあります。そのうち1,273法人は所轄庁が認証を取り消すことができる、3年以上未提出に該当しています。
NPO法人は事業年度ごとに事業報告書を作成し、事務所に据え置くとともに、所轄庁に提出することになっています。これを怠ると20万円以下の過料となります。3年以上事業報告書の提出がないNPO法人については、所轄庁が認証を取り消すことができます。情報開示を重要視しているNPO法人にとって、事業報告書はそれだけ重要なのです。
一見、自主的な解散と認証取り消しは結果としては同じ状況に見えます。しかし、認証を取り消されたNPO法人の解散当時の役員は、認証を取り消された日から2年間は他のNPO法人の役員になることができません。地域で活躍をしている人は、複数のNPO法人の理事を掛け持ちしているケースも少なくありません。その場合、あるNPO法人が認証取り消しになると、他の法人にも影響が及びます。また、所轄庁は認証取り消しをしたNPO法人のリストをウェブサイトなどに掲載しますので、活動を応援してくれた人に残念な思いをさせてしまいます。
しかし、中には少し事情があるNPO法人も存在します。先日、地域のNPO支援センターの方々と、休眠NPO法人の件について意見交換をしました。そこで「活動も止まっているが解散もできない」NPO法人の存在が見えてきました。例えば、理事長など中心人物の転居や突然の死去、理事の意見の相違により組織が「空中分解」した、人手不足や財源不足、等。一言でいうとガバナンスの不全で法人経営が行き詰まった状態です。理事会や総会が開けなくなったり、解散手続きに必要な資金が捻出できなくなる。こうして事業報告書も出せずに「座して死を待つ」状態となります。
私たちNPOの支援に関わる者はこの状況をどう受け止め、何をすればいいのでしょうか。
上記のようなNPO法人に事業報告書の提出を求めても、まっとうな対応は見込めません。
本来ならば、組織体力があるうちに解散時期を見定め、準備をしておきたいところです。NPOは本来、継続することが目的ではありません。ミッションの達成状況や、そのNPOが社会に提供している価値などを評価し、関わっている人の自発意思を尊重して、将来の方向性を早めに判断して対応することが理想です。しかし、解散には難しい意思決定が伴います。この意思決定の支援を行うには、専門性と日頃の信頼関係を構築していなければなりません。
先述のような運営が行き詰まった状態にあると、どう対応すべきか判断がつかない困難ケースも少なくありません。こうしたケースは今後増えることが考えられます。NPO支援センター間で事例と対応を共有し、所轄庁や専門家とも相談しながら、経験を蓄積しておく必要もあるでしょう。
先に引用した「座して死を待つ」は、諸葛亮孔明の言葉で、下の句があります。
座して死を待つよりも、出でて活路を見出さん。
解散を検討することで、やるべきことが明確になり、そのNPOの再活性化につながるきっかけになるかもしれません。解散を決定し、NPO法人の活動成果をまとめれば、別の人が新たな手法で活動を始めるかもしれません。役割を終えたならすっきり閉じることが、関わる個人にとっても、NPO法人にとっても、新しい一歩になるかもしれません。
NPO支援センターがそうしたNPOのライフサイクルに関わり、特定のNPOの存続ではない形で活動のバトンを繋げることが、市民セクター全体の発展にもつながるのではないでしょうか。
参考:いわゆる「休眠状態」にあるNPO法人の実態調査結果について
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/20190416kyuminchosa.pdf