私も運営委員として関わっているある団体で、1つの事業を継続するか、休止するかの議論があった。
運営委員とはいえ月1回の会議に出るだけのほぼ外からの目線では、その事業はその団体でしかできないことであり、その団体が存在する理由でもあるように見えていた。しかし実際に事業を運営する事務局にとっては、そうはいっても業務量からみても採算性からみても、不安を感じていたようだ。
この此彼の見解の違いをどう整理し、いかに組織として決断をするのかは、多くの団体が直面したことがあるであろう、難しい問題だ。
業務量の問題だけでも事業の優先順位、業務の効率性、個人のパフォーマンスや負担感・充実感などの感覚的な部分も含めて、様々な論点が想定される。採算性はその事業で得られる対価が十分かという視点だけでなく、協賛や寄付などの支援を受けられるか、という視点もあり、こちらも単純ではない。
そして支援の可能性を考えると組織のミッションやビジョン、存在意義がからんでくる。
すなわち「私たちだからこそ、やるべきこと」は何か。
1つの事業をとっても論点は膨らんでいく。
個人的には、NPOは多様な人から支えられて“なんぼ”だと考えている。
冒頭の議論をしているのとちょうど同じタイミングで、別のNPOのリーダーから「事業ばかりやっていると“事業者”になっていく」という問題意識を聞いた。
必要な対価を直接得られる事業を持つことは組織の安定性においては有効だが、それだけでは物足りない。NPOは多くの人に期待され、支えられ、ときに行動を共にしてもらえる組織でありたい。こうした積み重ねが社会に対してメッセージになっていくのだと思う。NPO草創期の議論では、こうした取り組みを事業に対比して活動と呼んだ。この団体の中心部に据える、確たる活動を何とするのか。
当センターも今年度、長年続けてきたいくつかの事業を終了させる決断をした。それらの事業に意義を見出してはいたが、同時に限界も感じており、過去の延長線上ではなく新たな発想でやるべき事業を考える余力を作りたいと考えてのことだ。新たな事業も試行しているが、多くの人に支持されているかというとまだまだ十分ではない。しかし、こうしたプロセスを重ねることで、組織は成長していくのではないか。
「私たちこそが、いま、これをやるべきである」を突き詰め、活動として表現していきたい。