自立とは”依存先を増やすこと”という逆説的な概念は、障害者支援の現場で聞くことがあるが、提唱者で自身も脳性麻痺者である熊谷普一郎さんの言葉には後半部分があったということを最近知りました。
「自立は、依存先を増やすこと。希望は、絶望を分かち合うこと」
そして、この言葉は当事者だけではなく、社会全体に向けて発信したメッセージだということに興味を持ちました。この言葉を「個人」ではなく「社会」という視点で読み返してみると、まるで違った意味が立ち現れる気がします。そして熊谷さんは、「(それが)誤解されると、弱さをオープンにして『助けて』と言う義務が個人の側にあるといった新しい自己責任論になってしま」う、と指摘します。(『「助けて」が言えない—SOSを出さない人に支援者は何ができるか』(日本評論社)座談会より)
障害を「個人」に帰するのではなく「社会」に存在するものだと考える「社会モデル」は万能ではないものの、多くの示唆を与えてくれます。そこには「健常者」が自明だと思っていた事柄や制度などをまったく違う視点で問い直す作業でもあるからです。であれば、このモデルは障害者だけでなく、より広く適用できるものだと言えそうです。最近NPOでよく使われる「伴走型支援」も、対個人だけではなく、対社会との相互関係を考えることで、個人の責任論に収斂されることのない、「助けて」と言える「社会」を創り出す一助となるのではないでしょうか。