休眠預金等活用審議会が議論を行っている「休眠預金等交付金に関わる資金の活用に関する基本方針(案)」については、去る2月9日から3月10日の間にパブリックコメントを実施し、その結果は3月27日に開催された第12回の審議会で報告されましたが、その取り扱いについて市民サイドから批判が出ています。

このパブコメに寄せられた意見は全部で168件ありましたが、審議会では事務局が主な意見を4つほど紹介したうえで、「これらの論点というのは、しっかりこれまでの審議会で御議論をいただいた結果として、皆さんに先般御了承をいただきました案文ができているということで、このパブリックコメントによって特段修正をしないということを、御報告申し上げます」と報告し、それを受けた審議会の会長は「我々がつくりました基本方針(案)に対するパブコメは、特に修正すべきというようなことはなかったということでございます。何か御発言はございますでしょうか」と続け、各委員からは特に発言はなく基本方針は了解されることになりました。パブコメの結果は当日資料として配布されたそうですので、各委員がその場で168件の意見すべてに目を通して発言することなど土台無理ではあるのですが。

パブリックコメント制度は、国の行政機関が政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めますが、これらを決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の意見を募集するもので、行政手続法により法制化されています。しかしながら、今回のようなケースを目の当たりにすると、「本当にパブコメ制度は機能しているのだろうか」という疑問を持たれる方も少なくないと思います。現在のパブコメは、審議会などでかなりのレベルまで練られたものが成案の形で示されるために、簡単な文言修正などの小さな意見は採択されるとしても、ちゃぶ台返しのような大きな意見を受け入れることは不可能な仕組みになっていることは事実です。

では、どうしたら良いのでしょうか。役所的には、「まだ検討中のふらふらしているような段階ではなく、相当程度に検討がなされた最終的な段階の案でないと国民に示すのは失礼だ」というに違いありません。しかしながら今回のようなケースが少なくないとすれば、法定のパブコメとは別に成案になる前の段階で意見募集を行い、できる限り多くの意見を成案に反映するという方法があるのではないかと考えます。これを国の行政機関が直ぐに始めるというのはハードルが高いと思いますので、どちらかの地方自治体で先進的に実施し、それが国を動かすということにならないものでしょうか。相互不信からは、何も得るものはないのですから。

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