いわゆるNPO法(特定非営利活動促進法)が1998年12月1日に施行されて、今年は25年の節目となります。 

「市民が行う自由な社会貢献活動」の健全な発展の促進をもって公益の増進に寄与するとしたNPO法は、草の根の市民活動団体に法人格と税制優遇を付与するだけでなく、「市民による公益」という考え方を広げる上で重要な役割を果たしたといえます。(*1) 

そのほかにも、NPO法が社会に与えた変化を独断でまとめたいと思います。 

1.草の根の市民グループが法人格を得られるようになった 

1998年当時、非営利で公益的な活動をする団体が法人格を得ようとするときは、旧公益法人をはじめとする高いハードルをクリアする必要がありました。NPO法によって実績や規模、活動内容を問わず、要件に従って認証されるようになり、多くの草の根の市民グループが法人格を得られるようになりました。法人格を得たことで、契約主体となることができ、雇用主となることができるようになりました。それに伴いガバナンスも一定求められるようになり、社会的な信用も増しました。 
2008年には一般社団・財団法が施行され、草の根の市民グループの選択肢はさらに広がりましたが、ここにもNPO法による影響はあったと思います。 

2.行政や企業との連携が行われるようになった 

契約主体になれることで、行政や企業とパートナーとして事業をしやすくなりました。 
NPO法が成立した1998年前後は、行政改革の流れの中で地方分権が進められ、企業も社会貢献活動を強く意識するようになった時代で、NPOへの期待が高まる社会的な背景もありました。NPOと連携をして事業を進めたいときに、法人として契約ができることは非常に重要です。NPOの広がりとともに、様々な協働事業が展開されることにつながりました。 

3.さまざまな社会問題に光が当てられるようになった 

「子どもの貧困」「ヤングケアラー」「LGBTへの理解不足」など、今でこそニュースに頻繁に取り上げられるものの、少し時代をさかのぼればその言葉すら世間に知られていない事象はたくさんあります。こうした事象が社会課題として認識されたことには、NPOの広がりが少なからず寄与しています。様々な困りごとや可能性にいち早く気づき、活動を積み重ね、時にその専門性を活かして調査をして、発信するNPOが多様に存在したことで、見過ごされがちだったことが社会化していきました。 

4.市民がエンパワーされた 

いまやNPO法人は5万を超えて存在しています。コンビニエンスストアの店舗数とほぼ同等と言われたりもしますが、法人格を持たない市民活動団体も入れるとコンビニよりも数は多く身近な存在といえます。NPOが多数生まれ、その存在が一般化したことで、自分たちが住む地域や関心あるテーマに対するアクションのカジュアル化が進んだのではないでしょうか。「自分も何かできるのではないか」という思いを形にする道筋が見え、参考にできる事例もたくさんあることで、市民がエンパワーされ、多様な活動がさらに呼び起こされているように思います。 

5.分野を超えた連携での取り組みが生まれた 

NPO法は特定の分野に縛られず、多様な分野の活動の共通の土台となっています。分野は違えどもNPOとして共通項があることで、異分野の団体が出会いやすく、里山活用を通した生物多様性保全と地域の交流を同時に生み出す取り組み、就労支援団体と農家の「農福連携」の取り組み、国際協力団体による災害支援を通した国内の団体とのノウハウ共有など、異なるノウハウを持った団体による連携での新しい取り組みが生まれました。 

6.市民による立法の先駆けとなった 

NPO法は全国の市民活動関係者と国会議員が議論を重ね、修正に修正を加えて議員立法として提出をされ、全会一致で成立しました。このプロセスの特徴を強調して市民立法と表現されることもあります。市民による立法の可能性を示したこと、また様々な社会課題に先駆的に取り組み専門性あるNPOが多数生まれたことで、その後「自殺対策基本法」(2006年成立)、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(2016年成立)、「食品ロスの削減の推進に関する法律」(2019年成立)などNPOが立法過程に大きな役割を果たした法律が生まれました。こうした市民による立法の先駆けはNPO法だといえます。 

7.寄付文化を広げた 

NPOの収入源は多様ですが、その中でも基礎となるのが会費や寄付金などの支援の思いの表れともいえる財源です。この25年、NPOは寄付をもとに様々な活動を生み出してきました。こうした活動の積み重ねが多様な寄付体験となり、さらに近年ではクラウドファンディングツールや市民財団が多様に生み出されるなど寄付のルートも広がりました。応援したい活動や解決したい社会課題があった際に自ら寄付をすることは、いまや一般的になりました。 

NPO法ができてからのこの25年、着実に社会にインパクトを与えてきたのではないでしょうか。 
みなさんはどのように感じられますでしょうか。 25年間積み上げてこれたこともあれば、課題もあると思います。25周年の節目がNPO法のこれまでを振り返り、これからを思い描く機会になればと思います。

日本NPOセンターでは、特定非営利活動法人セイエンと共催で12月1日に「NPO法25周年記念フォーラム ~未来の市民社会をともに描こう~」を開催します。 
また、翌12月2日には「市民セクター全国会議2023 ~NPO法から25年、いま市民セクターに求められること~」を開催します。 

ぜひ両日ご参加をいただき、NPO法が社会に与えた影響や、これからの可能性についてみなさんと意見交換できればと思います。 

NPO法25周年記念フォーラム ~未来の市民社会をともに描こう~ 
日時:12月1日(金)13:45~16:30 
会場:星陵会館(東京都千代田区) 
https://jnpoc.ne.jp/npolaw25th/

市民セクター全国会議2023 ~NPO法から25年、いま市民セクターに求められること~ 
日時:12月2日(土)9:30~17:00 
会場:聖心女子大学 聖心グローバルプラザ(東京都渋谷区) 
https://jnpoc.ne.jp/ss2023/

*(1)2012年に公開をした『今一度、特定非営利活動促進法の趣旨を考える』という記事も参照いただきたい。 

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