10年以上、入出金等の異動がない預金等を「休眠預金等」として、預金者に払い戻す努力を尽くした上で、「民間公益活動」の促進に活用する「休眠預金等活用制度」が2016年に成立し、2019年秋に予定されている助成等の開始に向けて、急ピッチで準備が進んでいます。

この事業の実施主体として「指定活用団体」の公募があり、1月11日に一般財団法人日本民間公益活動連携機構(以下、JANPIA)が指定活用団体として採択されました。今後、指定活用団体は「資金分配団体」を公募し、資金分配団体が「民間公益活動団体」への助成等のプログラムを実施することになります。

指定活用団体の公募にエントリーをした4団体の提出した資料は、内閣府のウェブサイトに掲載されています。それを見ると、JANPIAの提出した計画では、「草の根活動支援プログラム」に年間20億円、「新規企画支援プログラム」に年間5億円、「ソーシャルビジネス形成支援プログラム」に年間3億円、「緊急災害支援プログラム」に年間3億円を拠出することになっており、これとは別に「資金分配団体」への研修のための「基盤強化支援プログラム」として年間5000万円が想定されています。「草の根活動」を支援するための資金比率が突出して高いことが読み取れます。

内閣府が2018年3月に発表した「休眠預金等交付金に係る資金の活用に関する基本方針」では、「国民への還元」「公正性」などとともに「革新性」、「成果」をあげることなどが強調されており、「社会的インパクト評価」で成果を測ることが定められています。しかし、NPOが行う活動は、長期的にじわじわと地域に変化をもたらすものや、数値での成果を表しにくいもの(もしくは数値での計測手法が確立されていないもの)もあります。「革新性」や「成果」という言葉が持つ一般的なイメージからは、必ずしも全てのNPOが行う活動が相性がいいとは言えず、NPO関係者の間でも議論が巻き起こってきました。求められる「革新性」や「成果」をどのように解釈してプログラムに反映するのか。資金分配団体ごとの企画力が問われるところであり、資金分配団体を選定する指定活用団体の価値観が反映されるところです。

休眠預金等活用制度による助成を受けて事業を行おうとするならば、そこをよく見極めながら、活動で目指していることがねじまがらないよう、計画を立てなければなりません。

一方で、休眠預金等活用制度は、社会課題の解決のための資金源に選択肢を1つ増やしたにすぎません。

そもそもNPOが行う活動の源泉が、当事者や支援者からの共感だとするならば、そして、寄付や会費などが「NPOを支援する気持ちを表す資金」とするならば、替えが効くものではなく、それそのものに重要な意味があります。

「社会課題解決」の主体は多様化しており、もはやNPOだけがその担い手ではありません。休眠預金等活用制度によってその傾向はさらに加速するでしょう。そのような状況で、なぜ、NPOとして活動を行っていくのか。「NPOらしさ」とは何かが改めて問われています。寄付や会費などの支援性財源にこだわることが、これまで以上に重要な意味を持ってくるのではないでしょうか。