参院選の選挙前にSDGs市民社会ネットワークが、各党が打ち出している公約や政策の中に、「SDGs」がどのくらい取り上げられているか調べ、発表した。
各党が政策を形成するうえで、どの程度 SDGs を認識しているか一覧でみることができる。与党である自民党・公明党のほうがSDGsに関連した内容が多いことが、一目瞭然でわかる。
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なぜ、こういった極端な偏りがでてしまうのか。一覧を発表したSDGs市民社会ネットワーク業務執行理事である稲場雅紀さんに見解を聞いてみた。
「SDGsは世間では知られておらず、『選挙』となるとあまり票に結びつかない。なので、野党は『誰一人取り残さない』といったSDGs的な政策を掲げていても、SDGsとつなげて説明する必要を感じない。また、SDGsを取り上げるには、一定SDGsを『知って』いることが大事だが、SDGsが票に結びつかない以上、野党にはSDGsを学び、課題を結びつけるニーズがない。与野党間で差が出たのはこうした理由ではないか」稲場さんはこう述べた。
一方で、与党が出しているSDGsに関する公約・政策については、政府がすでに行っている政策の引き写しが多く、2030年目標をバックキャストした持続可能な社会に変革する視点が欠けていることも稲場さんは指摘した。
今年の秋には、持続可能な開発目標(SDGs)実施指針が改定される大事な年だ。パブリックコメントも行われ、私たち市民社会からの意見をしっかりインプットしていきたい。現時点のSDGs推進の中心は、行政と経済の2つの方向性に偏ったものとなってしまっている危機感がある。
奇しくも参院選のタイミングで、社会から注目を浴びたのが吉本興業の一連の騒動であった。吉本興業は、第1回「ジャパンSDGsアワード」で特別賞(SDGsパートナー賞)を受賞している。
稲場さんは吉本興業のニュースについて詳しくないと前置きし、
「ピカチュウやピコ太郎、吉本興業などの認知度が高いキャラクターや人を使って、SDGsを国民運動にしていこうという政府戦略は、残念ながら効果があがっていない。今回の騒動で、ガバナンス問題や労働搾取、権力の縮図が注目され、関連してSDGsのイメージが下がることは避けたい」と話す。
私たちが推進するSDGsは、決してSDGsに関連する事業を行うことではないはずである。誰一人取り残さない、包摂的な社会にしていくことめざすことである。