きずなメール
きずなメール・プロジェクトウェブサイトより

LINEの通知がなり今朝も「きずなメール」が届いた。「赤ちゃんの泣く理由がわからないときは・・・」、「うんちの色をチェック」といった育児の参考になることや「ママの体調はいかかですか?気分が沈みがち、赤ちゃんがかわいく思えずいまの状況がつらい・・・」と、不安に寄り添うようなテキストメッセージが毎日違う内容で送られてくる。

きずなメールに登録すると妊娠期から産後、3歳の誕生日まで定期的にLINEやメールにメッセージが届く。全部で約540通。初めての妊娠や育児は不安なことだらけ。「産後うつ」に10人に1人がかかるといわれている昨今、複数医師監修の信頼できる内容が育児不安も和らげる。

近所づきあいの少なさや核家族化によって「“孤“育て」が社会問題となるなか、NPO法人きずなメール・プロジェクト代表理事の大島由起雄さんは「つながりがないことで孤立してしまう社会に、ゆるやかなつながり、弱いきずなを大切にしたい」と語った。

きずなメール登録者の累計は20万人

妊産婦のメンタルヘルスに関わる問題は深刻化している。厚生労働省が2018年に発表した調査では産後1年までの妊産婦の死因で最も多いのが自殺だった。年々増加する児童虐待件数では2割が3歳未満の乳幼児、虐待をした人の半数が実母というデータもある。子育て環境のひずみが産後うつや乳幼児虐待などの社会課題として現れている。

大島さんは「自分も含めて、子どもを保育園に預けて夫婦で映画をみにいくことにためらいを感じる人は少なくない。子どもは親が育てるもの。母親が育てるもの。愛情豊かであるべきといった社会の無言の圧力が根強くあります。でも相談できる環境がない、頼れるところがないことから一人で抱え込んでしまうのです」と話した。

きずなメールには、妊娠期の「マタニティきずなメール」と子育て期の「子育てきずなメール」の二種類のコンテンツがある。事業をはじめてからの登録者の累計は約20万人。現在も約4万の人が講読しつながり続けているという。

講読者からは「初めての子育てでつらくなるときもあったが、毎朝届くメールを読んで気が晴れたり、不安に思いすぎることはないと励まされたりした」といった声がある。

子育て支援サービスを利用するきっかけづくりに

きずなメールイメージ
きずなメール・プロジェクトウェブサイトより

妊産婦が孤立する理由の一つに自治体とのコンタクトポイントが少ないことがある。様々な支援サービスがあるにもかかわらず利用していない人も多い。全国約30の自治体の事業としてきずなメールを配信することで、協働する自治体の子育て支援サービスを利用するきっかけづくりにもなっている。

たとえば神戸市では「こうべ子育て応援メール」という名称で配信している。メッセージの内容は、「妊産婦の不安を軽減させるような文・実践的に使えるアドバイス・専門家による注意喚起・自治体の相談情報」で構成する。

「妊娠・育児中の不安を軽減する文面だけでなく、地域の情報を入れることで地域からの孤立も予防する。これを地域につなげる。ソーシャルキャピタルの醸成に貢献することを目指しています」

神戸市が講読者に実施したアンケートによると、生活への影響では「不安な気持ちがやわらいだ」が44.5%と最も高くなった。24.7%の人が、「神戸市の子育て支援サービスを利用するきっかけになった」とも回答。(令和元年度読者アンケート結果報告書より

現在、“テキストメッセージング”としての効果の研究も行っているという。「虐待対応のリスク度でいえば、定性的には、ローリスクな層の予防に貢献している可能性が非常に高いと専門家も指摘してくださっています」

「やさしい日本語、多言語化」に取り組む

大島さんには2人の子どもがいる。1 人目の妊娠中は妻と二人、自身も地方出身であり孤育てに近い状態だった。その時期、赤ちゃんの成長を毎日紹介している洋書と出会った。「これをメールでやるといいんじゃないか」。きずなメールをはじめるきっかけとなった。夫婦ともに編集者だったこともあり、一から原稿を作りはじめた。

2010年に設立してから10年。今では講読者数もふえ、定期的に届く感想やお礼のメールがモチベーションになっているという。

「“孤育て”の予防に役立てたいという思いで変わらず10年やってきました。辛い事件もあるけれど、この10年で男性の意識が明らかに変わってきたりと、未来はそんなに悪くないです」

今後の展望としては、翻訳をして海外にも広げること。「きずなメール」を日本に住む外国人に向けて「やさしい日本語」にすることを計画している。

※現在「やさしい日本語で在住外国人の孤育て予防」のクラウドファンディングを実施中
https://readyfor.jp/projects/kizunamail/announcements/152378

取材後記

今回、大島さんへのインタビューを通して、団体名にもある「きずな」という言葉に込めた強い思いが伝わってきた。妊娠や出産、育児に不安を抱えている人にとってそっと寄り添ってくれる存在がとても大きな存在であると学んだ。そして、「きずなメール」自体もそういった人達に寄り添う存在であり、地域との新たなつながりをつくるきっかけとしても大きな役割を果たしていると感じた。

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