ザータリ難民キャンプ
新型コロナウィルス前の授業(国境なき子どもたち提供)

新型コロナウィルスの影響は中東ヨルダンにある「ザアタリ難民キャンプ」にも及んでいる。外出の自粛によって遠隔授業が行われているが、中にはスマートフォンなどのデバイス不足によって授業を受けられない子どももいる。限られた空間でストレスもたまりやすい環境の中、認定NPO法人国境なき子どもたち(KnK)は「写真」を使って子どもたちが「自己表現」をして、「外とのつながり」が持てる状況を作れるような試みを進めている。

ザアタリ難民キャンプの現状と「写真」がもたらす力について、KnK職員と写真家が、12月17日のオンラインイベント「コロナ禍、写真の表現力とつながる力」で語った。

ヨルダンの新型コロナ感染者数は12月12日時点で25万7275人であった。貧困問題やシリア紛争など問題はいくつもあるがそこに新型コロナが追い打ちをかけている。難民キャンプのコンテナハウスでは大家族で暮らす者が多い。週末は完全ロックダウン、夜間は外出禁止と自由に行き来することも困難な状況であり、ストレスから子どもに辛く当たる親も見られるという。

学校教育においてはヨルダン政府の方針で3月中旬からオンライン授業を行っている。ただ、現地の先生によると授業についていけている子どもは全体の2割程度しかいないそうだ。貧困層を中心とした通信機器の不足も踏まえると現地の教育問題も順調とは言い難い。

このような現状を背景に、KnKはこれまで実施していたメッセージ配信や授業での情操教育・キャリア教育に加えて、新たなプログラムを始める予定だ。子どもたちに写真を使った表現を伝え、スマートフォンなどを貸与。子どもたち自身が写真を撮る。撮った写真はインスタグラムやウェブサイトに配信する。プログラムの実施を通して、子どもたちの内部・外部とのつながり、自己表現を通した心理ケア、外部への情報発信する機会を増やすことが狙いだ。

写真家の吉田亮人さんは写真の持つ力について「コミュニケーションの接着剤」であるという。バングラデシュで行った「展示バス」のイベントを例に語った。イベントでは、現地でバスの車掌をする15歳の少年が働く様子を撮影し、現地の人々が能動的に展示し説明した。イベント後、現地の人からは「ありがとうございます」「外国人の視点だから気づけたことがあった」と喜ばれた。被写体の少年も「一般のお客さんが僕の名前を初めて呼んでくれた」と喜んでくれたという。

「写真を通してこの少年への『無関心』を『関心』に変えることができた。現地の人が『見る側』としてだけではなく『作る側』としても関わることでより濃いコミュニケーションを取ることができた」。

プログラムの経緯について、KnKでシリア難民支援現地事業総括を務める松永晴子さんは、「子どもが授業で作った図工の作品やお菓子の写真をLINEアプリで共有してもらっていたが、見本の写真と同じような撮り方をしている者が多く、子どもたちの表現力について考えるようになった。難民キャンプは外部とつながりづらく、現地の人こそ情報を発信したいのではといった考えもあり今回のプロジェクトに至った」という。

KnK理事・広報の清水匡さんは、フィリピンのワークショップを元に、「自分のテーマに沿った写真とメッセージを伝えることで相手に感動を与えられるため、必ずしも上手く撮る必要はない」と述べた。

子どもが撮った写真「イモムシは小さくて歩くのも遅いけど、葉っぱをいっぱい食べていつか蝶になる。そうすれば、空を飛ぶことだってできる。」バイバー(国境なき子どもたち提供)

吉田さんは「写真はシャッターを切るだけで表現ができ、コミュニケーションが苦手な子どもにも適しており、それぞれの物語を再度紡ぐきっかけとなる」と語った。

現在、写真を配信するプログラムを通して子どもが外部とつながり自己表現や情報発信ができるようにするために、クラウドファンディングを実施中
https://readyfor.jp/projects/knkjordan2020

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