「いわゆる中間支援組織で活動をしています」
日本NPOセンターの研修などで参加者からよくきく表現だ。
私はこの表現を聞くたびに思う。
「中間支援組織ってなんやねん」と。
使ってしまう気持ちもわからないでもないのだけれど。
内閣府が2002年に公表をした「中間支援組織の現状と課題に関する調査」では「多元社会における共生と協働という目標に向かって、地域社会とNPOの変化やニーズを把握し、人材、資金、情報などの資源提供者とNPOの仲立ちをしたり、また、広義の意味では各種サービスの需要と供給をコーディネートする組織」と定義している。
環境省は2009年「持続可能な社会づくりを担う事業型環境NPO・社会的企業中間支援スキーム事業のモデル実証事業」を募集。その要綱には「事業型環境NPO又は社会的企業の立ち上げを行うことを予定している環境関係の活動を行っている非営利の民間団体等が、地域資源を活用した持続可能な社会づくりを目的として、企業、自治体、金融機関、中間支援組織等と連携しながら取組むモデル的な事業で、そのための事業計画の策定が対象となる。」とある。しかしこの事業の要項自体には「中間支援組織」の定義がない。
2018年「持続可能な開発目標(SDGs)を活用した地域の環境課題と社会課題を同時解決するための民間活動支援事業」の公募要項でも「中間支援組織」という表現がある。この事業の報告では「環境省が設置する中間支援組織である環境パートナーシップオフィス(EPO)」という記載があるため、環境省のいう中間支援組織はEPOの機能を持つ組織が想定されていることが読み取れる。その環境パートナーシップオフィスについて環境省の事業概要では「地域における環境保全活動等における情報提供や、NPOと自治体、企業、市民等のパートナーシップ促進の拠点として設置している「地方環境パートナーシップオフィス」において、対話の場づくり、地域での活動の紹介、環境情報の提供・普及等を実施する。」と表現されている。
国土交通省は2015年の「国土形成計画」の「第3節国土づくりを支える参画と連携」の中に「(1)地域を支える担い手の育成等」という項を設け「共助社会づくりを行う主体を支援する中間支援組織としてのプラットフォームの構築を図る」としている。これを受けて2016年に「地域づくり活動支援体制整備事業」を実施。6団体が採択されている。
内閣府防災担当では2018年に「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック~三者連携を目指して~」を発行。2011年の内閣府「新しい公共支援事業の実施に関するガイドライン」を引用して「市民、NPO、企業、行政等の間にたって様々な活動を支援する組織であり、市民等の主体で設立された、NPO等へのコンサルテーションや情報提供などの支援や資源の仲介、政策提言等を行う組織」と定義し、中間支援機能として活動基盤の整備(資金と資材の提供)と支援者・団体のコーディネートの2つを挙げている。これを受けて2019年に改正された防災基本計画において「中間支援組織(NPO・ボランティア等の活動支援や活調整を行う組織)を含めた連携体制の構築を図り,災害時において防災ボランティア活動が円滑に行われるよう,その活動環境の整備を図る」という文言が盛り込まれた。
地方自治体においては、協働条例などで出てくることがある。
2013年に横浜市市民活動推進条例を全部改正する形で生まれた横浜市市民協働条例には、第16条に「中間支援組織」という条項があり「市及び市民等は、市民協働事業を円滑に進めるため、中間支援組織の育成に努めるものとする。2市及び市民等は、中間支援組織の助言に対して誠実に対応するものとする。」としている。
この条例の事務取扱要綱に「条例第16条に規定する中間支援組織とは、次の号のいずれかの市民協働に係る機能を有するものとする。」とあり、そこでは「ネットワーク機能」「コーディネート機能」「政策提案」「資金面の支援」「情報提供・相談機能」が挙げられている。
その前史をたどると、2004年横浜市が発表した「協働推進の基本指針」で、「中間組織とは、市民活動団体と行政との間にあって、一方で市民活動団体に対して、市民活動相互の連携や情報交換、情報や技術・技能、ノウハウの提供などの機能を持ち、他方で行政に対しては、市民活動全体の立場を踏まえて政策提言を行うものとして一般に定義付けられている」とされている。
こうしてみていくと、仲介や資源提供が「中間支援組織」に期待される概ね共通した想定される機能ではあるが、その定義も担い手も、使う場面や背景によって少しずつ異なる。また仲介といっても何を仲介するのかについて幅がある。
一口に「中間支援組織」といっても、その言葉自体に定まった定義がないので、その単語を使う会話は成り立っているようで成り立っていない。
横浜市市民活動推進委員会が2006年に発表した「中間組織に対する行政の支援のあり方について」という文書がある。「中間支援組織」と「中間組織」という表現の違いはあるが、「中間支援組織」という表現を使う際に生じる混乱のもとがよくあらわされているように思う。曰く
中間組織の機能として、ネットワーク、コーディネート、政策提案、資金面の支援の四つをあげました。しかし、これらの機能を全て兼ね備えた組織というと、限定された分野の公的な機関として社会福祉協議会のような例はありますが、民間主導型の中間組織においては見いだしにくい状況です。また、「中間組織」という言葉が普及されていないため、中間組織としての機能を持ちながらも、自らを「中間組織」として意識せずに活動している組織もあります。
「中間支援組織」という表現を使う際には、自らが表したい「中間」と「支援」を分解して、機能で表現するのがいい。誰を対象とするのか。何と何の中間なのか。資金や団体の仲介なのか、コンサルティングなのか、場所貸しなのか。そうすることで「中間支援組織」の輪郭が見えて、靄も晴れてくるだろう。
以上、研究途中の中間レポートでした。
中間支援のかたちを掘り下げる、中間レポート、最後まで期待してます。