2022年10月17日、消費者庁より「霊感商法等の悪質商法への対策検討会報告書」が公開された。 
この中にNPOに影響を及ぼしかねない、気になる一文が入っている。 

1.総論 
(略) 
③ 寄附に関する被害の救済を図るため、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18 年法律第49 号)第 17 条(寄附の募集に関する禁止行為)の規定を参考にしつつ、寄附の要求等に関する一般的な禁止規範及びその効果を定めるための法制化に向けた検討を行うべきである。 

いわゆる霊感商法の被害者救済についての議論が、この一文によって寄付募集を行うあらゆる主体に関わる問題となっている。 
特に、特定非営利活動促進法(以下、NPO法)は、市民からの支援を重視した法人形態になっており、その中でも認定NPO法人制度は、その公益性を市民からの支援の表れとしての寄付者数もしくは寄付金収入の割合で判断する設計となっている。そのため、寄付募集に関して制限が設けられるとすれば、少なからず影響があると考えられる。 

寄付募集の適正性をどう考えるのかは、私たちにとっても重要なテーマである。 
寄付は目に見える反対給付がないため、寄付者と団体の信頼関係があってこそ成り立つ。寄付募集における透明性や誠実さは自団体の信頼に関わることはもとより、寄付という行為自体に対しての印象を左右しかねない。特定の団体の不誠実な対応が、NPOセクター全体に影響を及ぼしかねない。 
そのように考えると、「禁止」に限定するかはともかく、寄付募集に関する一般的な規範について検討を行うべきという提案自体に異論はない。 

問題は、その規範を考える主体、その内容、そして拘束力の有無である。 
結論から言うと、私は寄付募集に関する規範はNPOセクターが自主的に定めるのがよいと考えている。 

寄付が個人の意思表示による任意の行為であり、団体の活動を支援する意思の表れだと考えると、法的な規制は可能な限り避けたい。また、寄付金を制限することで団体の活動を制限することにならないか。 
そもそも、錯誤や詐欺・脅迫による意思表示については民法で取り消しの規定がある。それに加えて、寄付だけを取り上げて禁止事項を加える必要があるのかどうか。 

自主的な規範としては、全国のNPO支援センター関係者が議論し、日本NPOセンターが取りまとめた「信頼されるNPOの7つの条件」や、日本ファンドレイジング協会が取りまとめた「ファンドレイジング行動基準」がある。 日本ファンドレイジング協会は、「寄付者の権利宣言2010」も公開しており、寄付者の権利と寄付募集を行う主体の姿勢の両面から提唱をしている点が興味深い。 
個別の団体でも取り組みはある。「寄付金取扱規程」などの名前で内部ルールを定め、募集方法や使途、報告などについての取り扱いを公開している団体もある。 
募集については、特に国際協力NGOでは武器兵器産業など特定の業種からの寄付を拒否する独自基準を設けているところもある。 
ポイントは、団体が大切にしている価値観と、寄付に関する情報開示。その上で、寄付者の自由意思を尊重する視点であろう。 

このように、寄付者に対する責任を自ら果たすために、寄付受け入れに関して積極的に姿勢を示そうという動きは既にある。このような取り組みを広げていき、NPOセクター自身が信頼を獲得していく必要があるだろう。 

なお、消費者庁の報告書でも取り上げられた公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律では、寄付募集に関する禁止行為について以下のように規定されている。 

(寄附の募集に関する禁止行為) 
第17条 公益法人の理事若しくは監事又は代理人、使用人その他の従業者は、寄附の募集に関して、次に掲げる行為をしてはならない。 
一 寄附の勧誘又は要求を受け、寄附をしない旨の意思を表示した者に対し、寄附の勧誘又は要求を継続すること。 
二 粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又は迷惑を覚えさせるような方法で、寄附の勧誘又は要求をすること。 
三 寄附をする財産の使途について誤認させるおそれのある行為をすること。 
四 前三号に掲げるもののほか、寄附の勧誘若しくは要求を受けた者又は寄附者の利益を不当に害するおそれのある行為をすること。 

寄付が個人の自由な意思表示であるために、これくらいのことは法律で定められるまでもなくクリアしておきたいものである。 

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