記事は情報発信ボランティアプロジェクトのライターボランティアが取材・執筆をしています。
<取材・執筆>倉上 啓  <取材先>東京ボランティア・市民活動センター
企業担当 河村暁子さん

「ボランティアに参加したいので、休暇を取りたいです」。職場の部下からこのように言われたら、どう考えるだろうか。この数年、企業によるボランティア活動に関心が集まっている。しかし、社員がボランティアに参加する意義を理解しているマネジメント層はまだ少ない。「社員と地域社会がつながることが、社員にとっても企業にとっても重要」。そう語るのは、東京ボランティア・市民活動センター企業担当の河村暁子さんだ。

── 2001年から企業各社と社会課題に取り組むプロジェクトを実施してきた河村さんから、企業ボランティアの魅力を聞いた。

「買って、食べて社会貢献」というプログラムがあります。美味しいものを買って、食べるだけで社会貢献になるんです。障害のある人が作ったパンやお菓子を社内で販売して、社員は「販売ボランティア」として手伝います。チラシの作成や看板の飾り付け、SNSでの商品宣伝も社員が行います。ある企業では、役員がクリスマスにサンタさんの格好をして各販売ブースに立ちました。 だんだん役員同士の競争意欲も高まり、自分たちのブースが売れるような戦略会議が開かれたりして 。社員が来て「どれを買ったらよろしいでしょうか」とかしこまってしまったり(笑)。商品がたくさん売れるだけでなく、ブースで障害のある人と社員や役員が一緒に販売することで交流にもなります。

障害のある人たちが働くお店の職員の方からは「こんなに短時間でたくさん売ったのは初めてです。製造に携わる障害のある人たちの大きな自信につながります」という言葉がありました。一方、社員からは「すごく良かった。またやろう!」という声が多く聞かれました。社員それぞれの都合や興味に応じて参加しやすいように作業を分担する等の工夫をすることで、多くの社員を巻き込んでいます。

企業ボランティアでは参加しやすく、意義を感じられるプログラムを用意することが大切です。企業の社会貢献担当はどうやって、他の社員を巻き込むことができるか、皆さん悩んでいます。私たちもできるだけ多くの社員が参加したくなるようなプログラムにできるよう一緒に考えています。

私が企業担当になった2001年と現在を比べると企業からの相談件数は増えています。ただ、企業の社会貢献担当はボランティアのイメージがあまりない方も多く、「子どもに関するボランティアをしたい」という漠然とした希望も多いです。そうしたときには「児童福祉施設の子ども」だけでなく、「地域の一人親とその子ども」や「障害のある子どもとその家族」、「外国から来た子どもとその家族」と、支援が必要な様々な人たちと企業・社員をつなげることを心掛けています。

一人が変わることが波及効果を生む

── 企業ボランティアの魅力は、企業にも、受け入れる団体にも、参加する個人にも得られることがあるということだ。企業ボランティアを通して「一人」が変わっていくことで、インクルーシブな社会を実現できる。

企業ボランティアは、本業のビジネススキルを持ち込んでもらえるのが団体にとっての魅力の一つです。一方、参加する社員はダイバーシティな地域社会の実態を体験し、自分たちも社会の一部であることを実感しながら、本業にフィードバックできる発見やネットワークを得られます。双方にとってとても重要なことだと思います。

例えば障害のある人やご家族と会ってもらうことで意識が変わる。なんとなく遠い存在と思っていた人たちが身近に感じられる。ボランティア活動を通して、会社で働いている障害のある人への理解も進む。そういう意識を持った社員がいることが本業のビジネスに影響を与える。社会がどんどんインクルーシブになっていきます。

企業ボランティアをきっかけに、プロボノとしてNPOに入って活躍している人や、NPO・財団などを立ち上げる人もいます。企業の人は一度火が付くと止まらないんです。一人が変わることで波及効果が次々と生まれると思っています。

企業ボランティアを経て、社員が一人でも二人でも会社のプログラム以外でもボランティアに参加するようになってくれたら良いなと思います。企業の社会貢献では寄付やスポンサーだけでなく、「社員参加」が重要なテーマだとして取り組んでいます。

「みんなでボランティアに行こう」という企業になるために

── 企業で社員個人がボランティアに参加するには、「業務が多忙であること」、「上司の理解が得られないこと」、「ボランティア休暇制度の使いづらさ」といった課題がある。

仕事を休んでボランティアに参加すると上司に伝えると、「そんなことをしていないで仕事をしろ」と理解を得られない。ボランティアに参加することをあえて上司に伝えず、有給休暇でボランティアに参加する人もいるという。ボランティア休暇制度の使用率は11.3%(※)と低い。日本ではまだまだ社員がボランティアに参加することに理解を得られていない現状だ。

※的場康子「法定外の特別休暇制度の現状とその意義」(2016年)

日本人は、仕事にたくさん時間をかけ、まじめに一生懸命向き合っています。だから仕事以外で時間の余裕がない人が多いのかもしれません。

「そんなことをせずに仕事をしろ」と言われないためには、仕組みづくりとマネジメント層の理解が重要です。「ボランティア休暇制度があるから取ってください」だけでなく、勤務時間に研修として参加する方法もあります。外資系企業では勤務時間を利用してチームでボランティア参加する動きもあります。部署で行ったり、インターセクションで行くとチームビルディングにもなるので上司や同僚に了解を得られやすいのではないでしょうか。点のアプローチでなく、面のアプローチが必要です。

新任研修でボランティアに参加するのは時間を取ってもらいやすいです。ある企業の新任研修では、研修の様子を映像で残しています。新入社員の人たちは、最初は重度の障害がある人たちに戸惑いながら接していきますが、とても良い関係に変化していきます。

映像でその変化を見せることで、マネジメント層にも「ダイバーシティを学べる良い研修ですね」と思ってもらえる。ツールを用いて効果を見せることで、社内の理解を得られます。

様々な形で多くの社員がボランティアに参加し良い体験をすると、ボランティアがカルチャーになっていくんです。

ボランティアの可能性と限界

── 河村さんもボランティアで人生が変わった一人だ。大学生時代、脳性麻痺の人のボランティア活動を通して、ボランティアの可能性と限界を味わった。大学卒業後、東京都社会福祉協議会に就職し、2001年から企業担当としてボランティアの普及に力を尽くしている。

大学に入ってから校内を歩いていたら、たまたまボランティア募集の張り紙が目に入って大学の先輩と一緒にボランティアを始めました。都内のアパートに住む脳性麻痺の女性を学生がケアするボランティアです。当時介護ヘルパーは週に2回程しか来ることできず、食事のお世話や外出の支援を学生ボランティアが担っていました。

ただ大学生は就職が決まると忙しくて、ボランティアに参加できなくなる。だんだんボランティアが減っていくと、少ないボランティアに負担がかかる悪循環になりました。

ケアをする人が常時必要な人もいる。一方、ボランティアの負担の限界もあると思いました。ボランティアの可能性と限界、そこに私の原点があります。

大学の卒業論文では、「地域福祉」、「在宅ケア」について書きました。卒論のテーマを知った友人が、「地域福祉を担う人募集」という求人が学生課にあったよと言って東京都社会福祉協議会の募集概要を持ってきてくれました。社会学専攻で、福祉の分野は専門でなかったけれど「興味があることができる仕事だ。受けてみよう!」と思いチャレンジしました。当時倍率が高い仕事で、受かるかな?と思っていましたが就職が決まりそれから社会福祉協議会で働くことになりました。

学生時代に感じたボランティアの可能性と限界。ボランティアは何ができるのか、ボランティアができないことは誰ができるのかを常に考えながら今の仕事をしています。

小さい企業やグループを応援したい。

── 東京ボランティア・市民活動センターでは2015年から、「企業ボランティア・アワード」を実施している。熱心に活動している企業ボランティアを応援、承認する場、そして企業とNPO団体の出会いの場になっている。

社員、CSR担当、企業に「皆さんがやっている活動は本当に素晴らしい」と伝える場が必要だと思ったんです。

受賞式には受賞企業、NPOのほか、その年に開催した各種セミナーに参加した人などが参加しています。最近は東京大神宮マツヤサロンで授賞式を行っています。東京大神宮はちょうど縁結びの神様なので、企業とNPOの縁結びなんて言っちゃって、ネットワークを作る場にしています。授賞式では受賞企業もNPOも、同じ団体が一緒にならないようにテーブルをばらして座ってもらっています。同じテーブルで名刺交換をして、そこから連携の話が始まった事例もたくさんあります。

大賞にはボランティア活動に使ってもらえる活動奨励金20万円を贈呈します。パートナーの非営利団体でのボランティア活動のために使えます。活動資金を通して、社員の自発的な活動や小さな企業の社会貢献を応援したいです。

日本で働いているほとんどの人は中小企業に勤めています。そういう人たちが仕事以外でも社会に貢献できるという体験をしてもらえたらうれしいですね。

1 のコメント

  1. 企業内にボランティア組織(組合や、人事、CSR、同好会ほか)が無いところは、ぜひ作ってください。また、「ありますよ」と言う企業さんは、社員、従業員からのカミングアウトを奨励してください。ボランティア休暇制度も企業が進める活動のみ認める企業さんと、社員、従業員が見つけてきた活動まで広くみとめる企業と大きく2つに分かれますね。私自身は、自分が主催する団体の活動をも休みに認めてもらえるように働きかけ中です。
    企業での活動は職場関係を引きずりがちなので、一度こじれると本当に大変ですね。趣味性が高いのですが、「動物愛護だけがボランティアだ!」なんてね。仕事の進め方でも考え方が色々あるように、ボランティアにもいろいろな価値観があります。ボランティアの4条件などと申しまして、価値観の併存をも促すキーワードも必要でしょう。
    あくまでも私見なのですが、企業ボランティアは一種の団体活動ですね。個人力秀でたボランティアさんとは、災害ボランティアセンターであるとか、別のいろいろなところでお会いします。ただ、声をまとめる機能がNPO業界や社協にも無いので、意見無き多数扱いされちゃうんですね。首都直下地震のひっ迫性が語られておりますが、72時間を所属企業の中で無為に過ごすつもりは無いんですね。同じような思いをお持ちの方、ぜひ連携しましょう。

    高田 昭彦

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