“ミツバチが絶滅すれば人類は4年後に滅びる”というアインシュタインの説を聞いたことがあるだろうか。

植物の受粉を担うミツバチは、生態系を育む鍵となる存在だ。しかし、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、ハチや蝶は40%が絶滅の危機にあると言う。

世界中でミツバチを絶滅から守る活動が行われているなか、『ニホンミツバチを救いたい』という思いを持ち、奈良県から全国に向けてニホンミツバチを救助し、彼らが棲める森の再生活動をしているNPO法人ビーフォレスト・クラブの代表、吉川浩さん。

ニホンミツバチの救助を通し、自然・生態系の再生と持続可能な社会をつくることについて伺った。

「ミツバチって危ない?」その思い込みが日本の生物多様性の損失につながる

「日本にいるミツバチは、ニホンミツバチと西洋ミツバチの2種類。それぞれ異なる習性や役割を持ち、自然との関わりかたも違う。ニホンミツバチは在来種で野生の昆虫、西洋ミツバチは外来種で家畜の昆虫です」と吉川さん。

ニホンミツバチは多様な蜜源から蜜を集めるが、西洋ミツバチはひとつの蜜源から集める習性がある。多様な場所で多くの植物に受粉するニホンミツバチこそが、日本の植物の多様性を育む鍵となる。そう、ニホンミツバチが少なくなると、生物多様性にも影響が出てくるのだ。

Aが西洋ミツバチ、Bがニホンミツバチ(写真提供:ビーフォレスト・クラブ)

「守るべきニホンミツバチの認識が共有できていないのに、守っていくのは難しい」

日本ではこのミツバチの違いの認識が欠けており、ほぼ西洋ミツバチのイメージになっている。また、一般に「ハチ=危ない」というが、ニホンミツバチは大人しい性格で、スズメバチやアシナガバチのように攻撃してくることは基本的にはほとんどないと言う。

吉川さんは、ニホンミツバチが激減している現状をほとんどの人が知らないことに危機感を抱き、全国へニホンミツバチの繁殖殖環境作りのための活動を行いながら、同じ思いを持つ仲間とつながっている。吉川さん率いるNPO法人ビーフォレスト・クラブの活動の柱は、「森に巣箱を置きニホンミツバチを増やす」「ミツバチや送粉者の正しい知識を広める」「環境指標としてのビーフォレストMAPを作り公開する」だ。

全国の森や農園に自然巣の代わりに巣箱を置いて、ニホンミツバチの繁殖環境を整えている(写真提供:ビーフォレスト・クラブ

自然は資産、利用するより保護・再生することが大切

自然の仕組みや自然との生き方も吉川さんが伝えていきたいことの1つだ。

「私たちは自然を利用させてもらって生きています。しかし今の社会は自然を利用し、利益を上げることばかり考える傾向にあると言えるでしょう。現代社会が抱える環境問題は、こうした人間のふるまいが原因にあるのです。自然が疲弊し、私たちの足元はおぼつかなくなってきています。自然を利用し恩恵を受けるだけではなく、自然を再生させていくことが大切です」

吉川さん自身がミツバチを救う活動を通して自然から学んだことを、活動を通して人に伝えている。しかしその思いを理解してもらうのはそう簡単ではない。

奈良から全国へ、活動を持続的に定着させる道のり

全国でミツバチに対する誤解や生態系の中での役割や自然の仕組みのことを伝え、自らの足で森を探し、巣箱の設置をお願いしてきた吉川さん。しかし、ミツバチは危ないという根強いイメージがあることや、養蜂ではないことで何のメリットがあるのかとかえって理解してもらえないこともあると言う。

「NPOという形態で活動し始めたのは、持続的な組織として続けたかったから。少しずつでも続けていかないと意味が無いんです。いつか私がNPOの活動を続けられなくなっても、それぞれの地域で活動が続いていってほしい。そのためにも行動できる仲間を増やしていく必要があります」

今は、守るべきニホンミツバチへの理解と知識を広め、全国各地で活動を進めるコミュニティを作っている最中だ。

任意団体からNPOへと活動を続けて約5年、今では全国に約500個の巣箱を設置している。奈良を中心にその範囲は九州から東北に及ぶ。将来的には全国に10万個の巣箱を設置することを目標にしている。

ニホンミツバチを守るべく、日本各地で巣箱を設置する仲間たち(写真提供:ビーフォレスト・クラブ)

色んな人との出会いがモチベーションに

2019年に出版された、吉川さんの著書『ミツバチおじさんの森づくり』に影響を受けた人も数多くいる。近々、その一人に会いに行くと語ってくれた吉川さん。「人との繋がりが、やりがいになっています。一番伝えたいことが伝わると嬉しい」さらに、「自然やミツバチには境界がない、それぞれに繋がっている。それを守り再生する人間の対応がバラバラではいけない。繋がって活動することを大切にしています」と続けた。

新型コロナウイルスの影響で、活動が縮小されるなかでもインターネットを活用し、人と繋がることで作られるコミュニティ。色んな出会いが色んなプロジェクトに繋がり、その活動が全国へと広まっている。

“農”との連携を深める2021年

ビーフォレスト・クラブは、さまざまな自治体や団体、学校と連携し活動している。来年は以前から行っていた“農”との連携も深めていく。山や森に巣箱を置きニホンミツバチを増やし、自然を再生する恵みとして作物を実らせようという取り組みだ。

冒頭で紹介した通り、ニホンミツバチや蝶などの野生の送粉者は減少している。そのため、最近では家畜である西洋ミツバチを利用して作物の受粉が行われるようにもなった。

そんな中、「ニホンミツバチ以外の野生の受粉昆虫も調査して殖やす活動をしていきます」と吉川さん。野生の送粉者を殖やす活動は、自然の生物多様性を守り生態系を維持するだけでなく、その活動は“食”にも繋がるのだ。小さなニホンミツバチを通して大きな生態系という繋がりを再生する吉川さんは最後に「私の目標は高いですよ!」と力強く述べた。

取材後記

吉川さんの取材を通して、私たちは地球の生態系という大きな枠組みの中で生かされ生きているのだということを改めて感じた。自然の繋がりを理解し意識することで、自然に負荷をかけない利用の追求だけではなく、壊れていく自然を再生する活動へと行動していくことの大切さを強く感じた。
また、自然や生態系の仕組み・動植物の生態が正しく認識されなければ間違った環境保護活動になりえることも学んだ。

1件のコメント

  1. ビーフォレスト.クラブ様
    吉川様の活動に
    何時も応援しています!
    我が家にも毎年日本ミツバチが、やって来ます。家庭菜園のお花、野菜畑、ミカンの木、スモモの木
    そしてグランドカバーのヒメイワダレソウの花々にも来てくれています。
    日本ミツバチを追い出す様に、西洋ミツバチがやって来たら自然と日本ミツバチは姿を消してしまいます…
    出来たら家にも巣箱と思いますが、万が一、沢山集まってしまったらどうして良いか…と
    迷ってしまいます。

    奈良県斑鳩町に在住

    勝眞香代子

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