<執筆>シュナイデル 恵里花  <イベント>移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連) 在留資格のない外国人の生存権を求める院内集会と省庁交渉「生きられない!ー在留資格のない外国人の現状と支援現場からの提言」

2022年11月2日、衆議院第二議員会館。会議室で行われた集会で、「生きられない!」と声をあげる人たちがいた。「在留資格」のない外国人と、その支援団体だ。
在留資格とは、ひとことで言うと外国人が「合法的に」日本に滞在するための資格である。「出入国管理及び難民認定法」、いわゆる入管法に基づいて発行されている。
では、在留資格がない人は、どうなるか。

会議室の様子。在留資格を持たない外国人と支援団体の深刻な状況に、耳を傾ける参加者たち。
(提供:一般社団法人反貧困ネットワーク)

在留資格のない外国人の行き場

在留資格がない外国人は、出入国在留管理庁(以下、入管)が実施する違反調査の対象となる。調査を経て主任審査官が収容令書を発行した場合、入管施設へ収容されるのだ。その場合は収容期間が決まっており、60日間が最大。そして、最終的に国外退去処分が決定した場合、出国または送還となる。
しかし、本人が送還を「拒否」することもある。母国へ帰ると命の危険があることや、日本で教育を受ける自分の子ども1)と離れ離れになることなどが、主な理由だ。母国へ帰ると命の危険がある外国人は難民認定を受ければ在留資格を得られるが、難民申請をしてもなかなか認められない人たちも多い。というのも、日本の難民認定率は、1%未満。この数値は先進7カ国(G7)の中でも、日本が1番低い。そのため、多くの申請者が在留資格を”持てない”のが現状だ。
そこで問題となるのが、収容の長期化。退去強制令書発付後は、送還を拒否する外国人たちの収容期間に上限がない。「退去可能まで」と定められているため、無期限に等しいのだ。
収容中の外国人の人権をめぐって批判の声も多い。名古屋の入管施設では2021年3月、スリランカ国籍の女性が死亡。今年の11月には、東京の入管施設に収容されていたイタリア国籍の男性が死亡した。こうした死亡事故は過去にも起こっており、入管のあり方を問う声があがっている。

収容されない「仮放免」制度

ただし、収容令書が発行された人たち全員が入管施設に収容されるのかというと、そうではない。
日本には「仮放免」という制度があり、収容が決まっていても一時的に外で生活することが認められる人もいる。入管のWebサイトによると、2021年12月末の時点で仮放免中の人は4174人とある。
仮放免が認められるのは健康上の理由で通院が必要な人や、家族と一緒の生活が許された人など、状況は様々だ。なかには両親が在留資格を持たないまま日本で生まれ、仮放免者として暮らす学生もいる。
この日「生きられない!」と声をあげた外国人らは、在留資格を持ちたくても持てない仮放免者たちだった。議員会館の会議室で開かれた集会は、支援団体によって開かれたものだ。集会のあと、法務省・厚生労働省の職員と対話する省庁交渉が行われた。会場は満席。筆者はYouTubeから、リアルタイムで配信を見ていた。
全体のテーマは、「在留資格のない外国人の生存権を求める院内集会と省庁交渉 生きられない!−在留資格のない外国人の現状と支援現場からの提言」だ。主催は、「移住者と連帯する全国ネットワーク(以下、移住連)」「北関東医療相談会」「反貧困ネットワーク」の3団体。在留資格のない外国人に対する公的支援のあり方や政策課題について、政府に提言を行った。
仮放免者が抱える問題とは、どのようなものなのか。

仮放免者を待ち受ける現実

「生きていくために仮放免者の就労を許可するべき」と主張するのは、北関東医療相談会の大澤優真氏。
仮放免者は、就労が認められていない。働けないので収入源はなく、彼らは「生きていけないほどに困窮している」という。しかし、違反すると仮放免が取り消され、入管に収容される。
働けないということは、家賃や医療費はもちろん、その日食べていく食費も払えない。このジレンマから抜けるために、まずは「就労を許可するべき」と大澤氏は主張した。

他にも、仮放免者に認められていないものがある。健康保険への加入だ。そのため、病院での治療費は必然的に高額となる。
「入管は、健康について何も考えを持っていません。あるのは『外人は日本から帰って』ということだけです」
そう訴えるのは、仮放免者として日本で暮らしている南米出身の男性。彼は母国で迫害を受け、拷問されたことが原因で耳鳴りの症状を持っている。とある病院を受診すると、手術代と補聴器代を合わせて計250万円を請求された。
病気に苦しむ仮放免者は、彼だけではない。北関東医療相談会の長澤正隆氏によると、手術が必要な仮放免者は今年の4月から数えるだけでも8人にのぼるという。
先ほどの男性は、後に北関東医療相談会の支援を受け、他の病院で手術を行った。治療費は82万円。長澤氏は、「支援はまだこれからも続く。皆さんご協力ください」と言葉を締めた。

この日3つの支援団体が、仮放免者の現状を説明した。
(提供:一般社団法人反貧困ネットワーク)

民間支援団体の訴え

「彼らにも医療・居住・就労の権利を」と訴えるのは、反貧困ネットワークの原文次郎氏。
「ナニジンだろうが、人間として生きていかなきゃいけないのは、みんな一緒なんです」と話す。現実、彼らの生活は民間の支援だけが頼りなのだ。

とはいえ、支援金は年々増える一方である。移住連の髙谷幸(たかや・さち)氏の報告によると、2020年4月から2022年9月の2年半の間、3団体が行った支援は1億7324万円にのぼるという。しかしこの金額は、最低限の生活保障にもなっていない。「1人1人の仮放免者にとっては焼け石に水程度にしかなっていないのが現状」だ。つまり、継続的に家賃の支払いもできなければ、通院できるほどの金額を支援できているわけでもない。この状態を続けるには、無理がある。
髙谷氏は、「在留資格を付与し、可能な人には就労の道を開く」か、「在留資格の有無にかかわらず、生存権を保障する」ことを求め、院内集会は終了した。

「このままでは何人もの外国人が死んでしまう」

集会の後、法務省・厚生労働省職員との省庁交渉が行われた。
反貧困ネットワークの瀬戸大作氏は、「民間が支援に入らないと、何人もの外国人が死んでしまう」現状を訴えた。民間団体が仮放免者の生活を支えるには、刻一刻と限界が近付いている。特に新型コロナウイルスが蔓延してからは活動が制限され、市民団体や宗教団体が仮放免者を支援することが金銭的に難しくなっているという。
「現場を見てくださいよ」と訴える声が、会場に響く。1時間30分に及ぶ省庁交渉は平行線をたどり、「年内にもう一度交渉に臨みたい」と瀬戸氏は話した。

現場の声を届け続けることが、未来へつながる

省庁交渉に入る前、協力団体「コロナ禍の移民・難民の医療を求める連絡会」による署名を政府へ提出した。移民・難民に対して高額な医療費を取らないよう、制度の改正を求めたものだ。その数4万6977筆。
しかるべき所に現場の声を届け続けることが、在留資格のない外国人の明日を、そして未来を明るくすると信じている。


[1] 在留資格のない子どもの就学については、2012年、文部科学省が通達した文書において、就学を実質認めるよう言及している。

参考リンク
法務省 出入国在留管理庁
在留資格のない外国人の生存権を求める院内集会と省庁交渉「生きられない!−在留資格のない外国人の現状と支援現場からの提言」
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
特定非営利活動法人 北関東医療相談会
一般社団法人 反貧困ネットワーク
コロナ禍の移民・難民の医療を求める連絡会

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