特定非営利活動促進法(以下、NPO法)の第1条をご存じだろうか。

そこにはこのように書かれている。
「この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること(並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること)等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。」
*カッコ内は2012年4月改正の際に追加

NPO法は1998年3月に成立、12月に施行された。従来の法律とは違い、市民が各党派の議員と対話をしながら多くの案を出し合い作り上げたものである。その過程で全国で開催された学習会や集会は数限りない。阪神淡路大震災が契機となり成立の機運が高まったのは間違いないが、1980年代からその必要性について市民活動関係者が地道に議論を蓄積してきたことが背景にある。市民活動関係者、議員、企業、研究者など様々な立場から多くの人々が参加し、議論を重ねて作った法律だけに、細部にわたってこだわりを持って作られている。そうした関係者の思いが、法律の目的を記した第1条に凝縮されている。

この条文では、非営利団体が法人格を取得できるようにすることと、認定NPO法人制度(認定されたNPO法人への税制優遇)を設けることで「ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動」の発展を促進し、それが「公益の増進に寄与」すると書かれている。
NPO法ができるまでは「公」を担うのは行政であり、市民は「私」として営利活動を担うものであって、「市民による公益活動」という概念は(少なくても制度上は)認知されていなかった。しかし何が公益かの定義は社会状況や市民の価値観の変化とともに変化するし、公益的な活動は行政にとって必ずしも都合のいいことではない場合もある。山積するくらしの課題を解決し、豊かな社会を実現するには、公益とは唯一絶対の何かではなく、多様な考え方があるという前提に立つ必要がある。

だからこそ、活動内容を制限せず、市民が主体的に自由に多様な社会貢献活動を生み出すことが求められている。しかし制度として推進する以上、本当にそれが公益活動なのかどうかを計る必要がある。そこで、NPO法ではボランティアや寄付などを通しての市民参加と、そのための情報公開を重視した設計となっているのである。市民が多く参加しているNPOは、それだけ公益性が高いという考え方で、選挙を通じて実現される公益とは異なる意思表示として参加を位置づけている。認定NPO法人の主要な要件が、寄附者の数や寄附金収入の割合をみる「パブリック・サポート・テスト」になっているのはその現れだ。

法律に「国民」ではなく「市民」という表現が使われているのは珍しいが、そもそもNPO法は「市民活動促進法案」として国会に提出され、衆議院を一度通過した。その後、現在の「特定非営利活動促進法」として成立した経緯がある。NPOという言葉が定着し、大きな期待が寄せられている今こそ、私たちはNPOとは参加を重視しながら市民が主体的に活動をする「市民活動団体」であるという原点を再確認し、自由な発想で多様な活動を生み出し育むことが求められているのではないだろうか。NPOが公益の担い手となることができるのか。ボールは私たちの側にある。