近年、大学生の地域への関わり方は多岐にわたっている。学生が自主的に参加するNPO等におけるボランティア活動のほか、プロジェクト型授業(PBL)やサービスラーニング、ゼミ活動等、授業を通じた機会も広く提供されている。

そのような大学生の地域参加の機会の一つに「インターンシップ」がある。大学生のインターンシップの多くは企業を実習先としているが、NPOを実習先としたものもある。私たちは、NPOにおけるインターンシップは地域人材育成において有効な仕組みの一つであると考えこれに着目し、この度、その可能性を探るとともに普及を目指すためのネットワーク組織として、「NPOインターンシップラボ」を発足させた。本稿では、これまでの実践を通じて見えてきたNPOインターンシップの機能や課題について述べるとともに、ラボが目指す方向性を提示する。

○NPOインターンシップとは

NPOインターンシップは、その言葉のとおり、NPOにおいて実習を行うインターンシッププログラムである。NPOにおけるインターンシップは企業におけるそれに比べるとまだまだ認知度は低いが、決して新しいプログラムではなく、20年近く前から実施されている。私が代表を務めるNPO法人アクションポート横浜でも約10年にわたりNPOインターンシップを運営している。

○NPOインターンシップの機能

これまで私たちがNPOインターンシップを運営する中で見えてきたことは、学生にとってはNPOや地域活動への入り口になるとともに、受け入れるNPOにとっては人材育成に貢献する機会になるということだ。

学生がNPOに関わる機会は、主にボランティア活動を通じて広く提供されている。しかし、そうした活動に誰もが参加するわけではない。他方、インターンシップは大学生にとっては身近な活動で、授業の一環で行われるものやキャリアセンターが仲介するもの、外部団体の運営するもの等多様であり、参加のハードルは低い。そもそもインターンシップとは就業体験を意味しており、企業への就職活動の一環としてインターンシップは学生たちに定着している。

そうしたこともあり、NPOインターンシップは、幅広く学生に対してNPOや地域活動への入り口機能を提供することができる。

なお、私たちが目指しているNPOインターンシップは就職活動としての企業インターンシップとは性質が異なることは言うまでもない。
NPOと企業では人材ニーズ(NPOにおける新卒採用のニーズは少ない)が異なるだけでなく、人材育成の意味も異なる。NPOの人材育成は自団体のためというよりも、社会を知り、社会課題を考える、いわゆる社会全体のための人材育成であり、この点において企業インターンシップとは活動内容も異なる。

また、一口にNPOといっても活動内容は福祉・環境・国際・まちづくりと幅広い。ステークホルダーも多様だから、1団体の中でも多様な人に出会える。それはつまり、多様な学生が受け入れできるということ。多様な若者が活躍し、成長できる可能性があるということだ。

一方で、多くのNPOはスタッフの高齢化や小さく人の入れ替えが少ない団体など、人材不足や人材育成に悩みを抱えており、学生の参加に期待する団体も多いだろう。彼らの参加はNPOの世界に関わる若手人材を育成することに繋がるとともに、組織内部においては未経験の若者を指導することにより人材育成力を高める機会ともなる。

活動においては、一時的とはいえスタッフが増えることによる効果は少なからずあるが、むしろそれ以外の貢献が顕著で、たとえば、学生のアイデアや思いを活かして活動を盛り上げたり、学生が参加することで子どもや若手社会人世代が参加しやすくなった、という声も聞かれている。

○NPOインターンシップの課題

一方でNPOインターンシップには課題もある。ひとつは、若者参加の裾野の拡大や地域人生育成といった成果はすぐに見えず価値が伝わりにくいということである。長期的な観点からの評価が求められる。もうひとつは、学生とNPOのマッチングは決して簡単ではなく、効果の高いインターンシップを実現するためには両者をつなぐコーディネーターとしての中間支援組織の役割が重要であるにも関わらず、その意義が理解されにくいこと。大学(および大学生)とNPOという目的の異なる組織が連携するためには、その橋渡し役としてのコーディネーターが不可欠である。

こうした性質から、結果として資金獲得が難しく、自立した運営ができていないプログラムが少なくない。
さらに、現状、それぞれの地域や中間支援組織が独自に実施しているプログラムが多く、プログラムづくりのノウハウや仕組み等が十分に共有されていない。そのため、新たにプログラムを立ち上げたいと考える地域や団体にとっては参画しにくく、普及しにくい状況にある。

○NPOインターンシップラボの目指すもの

ラボは、このようなNPOインターンシップに地域人材育成の仕組みとしての可能性を感じているNPOや大学等の関係者が集い、お互いの実践に基づく知見を持ち寄りながら課題を解決し、その普及と発展を目指していく。

NPOインターンシップは目的次第で、地域に応じていろんな応用がありうる。人材育成のためのインターンシップもありうるし、NPO支援のためのインターンシップもありうるのだ。こうした地域の特徴に応じて多様なプログラムがあることが面白いところだ。

私もそうだが、現在NPOで活躍している20代—30代の中には学生時代の活動を通じて新卒や中途でNPOに就職したという人も少なくない。そうしたことを考えれば、NPOインターンシップはダイレクトにNPOに人材を供給する仕組みにもなりえるし、たとえ、NPOで働かなかったとしても、NPOを理解する人が地域に増えることはNPOの活動にとっては大きな推進力になるだろう。NPOインターンシップラボでは、地域の人や組織における様々な可能性を感じて議論していく予定。是非注目を。